森咲智美 2018年11月22日号

話題の1冊 著者インタビュー 薬丸岳 『Aではない君と』 講談社 1,500円(本体価格)

掲載日時 2015年11月08日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年11月12日号

 −−数々の少年犯罪をテーマにした作品を出していますが、これらを題材にした理由はなぜですか?

 薬丸 僕が10代後半のとき、世間を震撼させる少年犯罪が起きました。被害者も加害者も、自分とそれほど年齢が変わらないことから大きな衝撃を受け、その事件をきっかけに少年法という存在を知り興味を持ちました。もともと少年法や少年犯罪に関する本などを読んでいたのですが、そこで思ったことを形にしたいと考えるようになりました。それがデビュー作の『天使のナイフ』につながり、今作の『Aではない君と』へと結実しました。僕の作品は少年犯罪を題材にしたものばかりではありませんが、定期的にそういうものを書くのは、やはり個人的に一番関心のある事柄だからだと思います。事件報道を目にするたびに被害者やそのご家族に感情移入してしまい、つらくなりますが、未成年者が被害者になったり加害者になったりする事件は、さらに胸が痛みます。

 −−本作では犯罪を犯した少年の父親が付添人になっています。このようなケースは多いのでしょうか?

 薬丸 これに関しては実際のところ分かりません。少年法の条文には、家庭裁判所の許可を受ければ保護者も付添人になれるとありますが、そのことに関する資料や統計などは見つかりませんでした。公的な機関に取材の依頼をしましたが、詳しい事案は教えられないということでした。ただ、過去に保護者が付添人になったケースがあるという回答だけいただけました。また、監修をしていただいた弁護士の先生からは、この作品のようなケースであればあり得るのではないか、と言っていただけました。

 −−酒鬼薔薇聖斗が自叙伝を出して世間を騒がせましたが、どうお考えでしょうか? また、現行の少年法をどう思いますか?

 薬丸 手記はまだ読んでいませんが、元少年Aが開設したというHPをチラッと見ました。自己表現をする以前に、自分の人生を懸けてやらなければならないこと、考えなければならないことがあるのではないかと感じます。少年法に関してはこの場でその思いをすべて語ることは難しいですね。だからこそ、小説を書き続けているのだと思います。今までは被害者側の立場から小説を書くことが多かったのですが、本書では初めて加害者の家族の視点から描いたことによって、作家としてだけではなく、1人の人間としてさまざまなことを考えさせられ、“罪を犯した者の償い”について、一つの答えを導き出せたように思います。
(聞き手:程原ケン)

薬丸岳(やくまる がく)
1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年に『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。『Aではない君と』では息子が死体遺棄容疑で逮捕された物語を描く。

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