葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(86)

掲載日時 2015年12月26日 17時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年12月31日号

◎快楽の1冊
『復讐屋成海慶介の事件簿』原田ひ香 双葉社 1500円(本体価格)

 小説家はどのようにして会話の巧みさを磨くのだろう。もちろん先達の小説を大量に読まなければプロの作家にはなれないが、映画や演劇、あるいは落語などほかの表現で繰り広げられる会話も参考にしているのではなかろうか。形式が違うので、俳優のセリフの言い回しをそのまま文章で起こしても、何となくちぐはぐになってしまう。だが参考にしているのは確かかもしれない。
 以前、この書評コーナーで小説『月神』を書いた井上敏樹が脚本家出身であることに触れたが、本書『復讐屋成海慶介の事件簿』の作者も同様である。ただ彼女の場合、NHK創作ラジオドラマ大賞を得た2006年の翌年、早くも『はじまらないティータイム』ですばる文学賞を受賞している。今回取り上げる連作短篇集は全五話。タイトルからも分かる通り、復讐屋事務所を営んでいる成海の依頼に応じる手並みが鮮やかで、彼が主人公と言ってもいいが、視点の中心人物は秘書の神戸美菜代なので、彼女が主人公のようにも感じられる。
 美菜代は東証一部上場の商事会社で社長秘書をしていた。同じ社の営業部社員と本格的に交際するようになり、当然結婚できるものと思っていたのに、彼は別の女性社員と婚約してしまった。これがきっかけで美菜代は会社を辞めざるを得なくなった。それで男に復讐したくなり成海の事務所を訪れたのだ。しかし、彼はセレブ相手にしか仕事をしないと決めている。彼女の依頼は断られたが強引に弟子入りを志願し秘書になる。
 とにかく、この作者は会話がうまい。簡潔で無駄なく、テンポがいい。マイペースで何を考えているか分からない成海に美菜代が苛立ち、不満をぶつける様が実にユーモラスなのだ。だが、実は成海は復讐屋と言いがら、依頼者に復讐心を諦めさせる優しさも持っている。ほっこりした読後感がいい。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 “汚ブス”という言葉をご存知だろうか? 思いやりに欠ける、いつも顔がブスッとしている、男に対して隙だらけ…などなど、そうした女を汚ブスという。
 名付けたのは汚ブス研究家のKENJIさん。オネエキャラの鋭い舌鋒で内面的ブスの実情を暴きまくる爽快な方だ。
 そのKENJIさんの著書が『汚ブスの呪縛〜愛って何かしら?』(サイゾー/税込1000円)だ。
 例えば、派手な露出で男を釣ろうとする女。女が数人集まれば、必ずいるタイプだ。これが汚ブス。「私を見て」「かまって」というアピール女である。
 こうした女たちが、そもそも「愛」をどう考えているか−−が本書のテーマだが、予想通り自分本位の考えが満載だ。
 なるほど汚ブスの実態とは、頭の中身は少女のまんまのお花畑、一方でプライドだけは一人前という、オトナになれきれない成人女子と気付かされる。
 不倫に溺れる、離婚事由が夫の悪口ばかり(自分には責任は一切ない)といった、汚ブスの典型例も紹介されている。
 周囲を見渡せば「あー、いるいる」と、即座に友人、知人に思い浮かぶ女がいるだろうが、どういうわけか、男ウケは決して悪くないものである。だが、実際に付き合ってみると、面倒なことこの上ない。
 KENJIさんは「汚ブスにならないように…」と、女性向けにこの本を著したと思うが、男が読んでも女の実態を知るうえでタメになる。ぜひ一読を!
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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