彩川ひなの 2018年7月5日号

話題の1冊 著者インタビュー 藤真利子 『ママを殺した』 幻冬舎 1,300円(本体価格)

掲載日時 2017年12月31日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年1月4日号

話題の1冊 著者インタビュー 藤真利子 『ママを殺した』 幻冬舎 1,300円(本体価格)

 ――11年間の介護生活は壮絶だったといいます。実際に“在宅介護”をして感じたことを教えてください。

 藤 そもそもまず、重度の母を受け入れてくれる介護施設や病院がなかったことがあります。人気の施設は1000人待ちの状態で、とてもじゃないですが待っていられません。まさに四面楚歌の中、在宅介護を選ぶしか道はありませんでした。実際に自宅で介護を始めて見ると、膨大なヘルパー代がかかることが分かりました。料金はどんなに安くても1時間2000円ぐらいから、深夜になれば4000円と倍になる事業所もあります。
 また、医療処置ができないヘルパーの場合、さらに看護師代もかかります。これが24時間毎日続くのですから、もはや私がどんなに仕事をしても、必ず赤字になってしまうのです。大変な生活でしたが、私と一緒に撮った母の笑顔の写真をお世話になった慶応大学医学部の先生にお見せしたところ「あんな容態だったのに、奇跡だ」とおっしゃっていただきました。病院から自宅に移る時には嫌がっていた母でしたが、やはり慣れ親しんだ自宅で家族とすごす生活の方が、楽しかったのかもしれませんね。

 ――お母さんの死後、“後悔の気持ち”が生まれたそうですが…。

 藤 12年前、私が明治座の舞台公演中に、母は脳梗塞で倒れました。帰宅した私は、倒れている母を見つけ、震える手で119番しました。あの時もっと早く帰宅していれば、私の対応の遅れが原因で病状がひどくなってしまったのではないか、など、とにかく悔やむ気持ちばかりが湧き上がってくるのです。
 母が入退院を繰り返していた時は、その時の失敗を取り戻そうと必死でしたね。そして何より、私にとって母の最期を看取ることが人生の中で、一番辛い出来事だったといえるかもしれません。

 ――結びに「今は老人が愛おしくてならない」とありますが?

 藤 実は今でも、母が亡くなって一区切りがついたとは思っていないのです。亡くなった直後は正直、世界中の老人を機関銃で撃ち殺したい、というくらいの激情に駆られましたが、今では介護している人がうらやましい、と思っています。だって、私にはもう大好きな母を面倒見ることはできないのですから…。
 母の介護生活の中で、私も多くのことを経験し、学びました。でも、今はその時の知識を活かすことも、役に立たせることもできません。私にも何かできることはないか、今はそう考えています。
(聞き手/程原ケン)

藤真利子(ふじ・まりこ)
1955年、東京生まれ。女優。微美杏里の名で作詞も手掛ける。聖心女子大学文学部歴史社会学科卒業。父は小説家の藤原審爾。

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