葉加瀬マイ 2018年11月29日号

貴乃花2票落選の総指揮を執った黒幕の正体

掲載日時 2018年02月13日 16時00分 [スポーツ] / 掲載号 2018年2月22日号

貴乃花2票落選の総指揮を執った黒幕の正体

 この結果を見て、大笑いしているのは誰だろうか。
 不祥事が相次ぐ日本相撲協会。その幹部を選出する理事候補選挙、通称「理事選」が、初場所が終わったばかりの2月2日に東京・両国国技館内で行われた。
 注目は、なんと言っても貴乃花親方(45)だった。

 「(昨年終盤の日馬富士暴行事件にからんで)理事を解任されてまだ1カ月足らず。一回、出馬を休んでは」
 事前の一門会ではこんな意見が大勢を占め、身代わり候補として、貴乃花親方に負けない熱血漢と言われている阿武松親方(元関脇益荒雄)が挙がった。

 「みんなで(貴乃花親方に)頭を下げて頼んだ」
 と、長老格の常盤山親方(元関脇舛田山)は話している。貴乃花中心の一門ならではの光景とはいえ、ドラマでも見ているようだ。しかし、どこまでも信念を貫く貴乃花親方は、こう言ってあえて立候補に踏み切った。
 「みなさんは阿武松親方に入れてください。自分は(自らの)1票でもいきます」

 もし貴乃花一門から2人以上立候補しなければ、立候補者は定員いっぱいの10人ちょうどとなり、無投票になる。そうなると、八角理事長(元横綱北勝海)体制は数々の不祥事の責任を問われることもなく、すんなりと信任されたことになる。貴乃花親方は、それがどうしても我慢できなかったのだ。
 玉砕を覚悟。おそらく義理人情を貫くため、単身で敵地に乗り込む高倉健の映画を地で行くような心境で決めたに違いない。と同時に、「オレのこの気持ちを分かってくれるヤツラは一門を越えたところにもきっといる」という思いもどこかにあったはず。一門の壁がいま以上に厚くて高かった8年前でさえ、二所ノ関一門を飛び出した孤立無援の貴乃花親方に心打たれ、票を投じて当選に導いてくれた親方たちがいたのだ。もう一度、あの“貴の乱”の再現を…。

 貴乃花親方は直前までブログを更新し、立候補する理由について明かし、さらに次のように訴えた。
 「自由に意見を交わせる風土を作り上げることを私の目標にしたい」
 「大相撲は誰のものか? その公益性の意味を、我々は考え直し、正す時期に来ている」

 しかし、この貴乃花親方の思いは木っ端みじんに砕け散った。開票の結果、貴乃花親方の得票は11人の中で最低の2票しか入らなかったのだ。1票は自分の票で、もう1票は息子の嫁の父である陣幕親方(元幕内富士乃真)とみられているから、101人の親方たちの中で貴乃花親方の心意気に賛同し、1票を投じた親方はただの1人もいなかったことになる。大惨敗だ。
 おそらくこれは貴乃花親方にとっても計算外。投票が確定後、このところ頻繁に見せていた笑顔とは一転したかたい表情で、ひと言も発しないまま部屋に戻ったが、ショックでとても話せる心境ではなかったことが窺えた。

 どうして貴乃花親方は、こんなに救いようのない敗れ方をしたのか。票の流れを見ると、4年前に協会ナンバー2の事業部長だった先代九重(元横綱千代の富士)が落選した時によく似ている。
 この時の先代九重は、理事長の座を狙って北の湖理事長の逆鱗に触れたと言われる。このため、北の湖理事長の息のかかった出羽海一門の票が対抗馬の友綱親方(元関脇魁輝)に流れたと噂された。この結果、先代九重はわずか2票差で涙を飲み、一気にヒラ委員に落とされた。

 今度もまた、明らかに貴乃花親方の落選を狙ったような票の流れを読み取ることができる。
 「事前の予想では、貴乃花親方と一門の結束が甘い高島親方(元関脇高望山)、基礎票の少ない山響親方(元幕内巖雄)の3人が当選を争うと見られていました。ところが、高島親方は基礎票の9票から3票上積みして12票を獲得してトップ当選しましたし、山響親方も8票まで伸ばしました。この2人に“支援の手”が伸びたのは明白で、気になるのはその票の出どころです。一番余裕のあったのは時津風一門。おそらくここから高島親方らに流れたものと見られます。ここの長は八角体制を支える鏡山親方(元関脇多賀竜)ですから。また、一門の締め付けも相当なもの。『裏切ったら一門から追放する』、と宣告した一門もあり、今回は貴乃花親方が入り込む余地がなかったんです」(大相撲担当記者)

 気になるのは、この「貴乃花潰しの総指揮を執ったのは誰か」だ。選挙の結果、誰が最も利益を得たか、というところをみれば、自ずと浮かび上がってくる。
 貴乃花親方が消えたので、3月の理事長選で。八角理事長の再選はもう確実だ。たとえ身代わりで当選した阿武松親方が手を上げても怖くはない。しばらく八角理事長の天下が続き、2年後に貴乃花親方が返り咲いても、「これまでのような求心力は戻ってこない」と見る関係者は多い。
 つまり、みんなで寄ってたかって貴乃花親方を袋叩きにしたのだ。

 問題は、貴乃花親方の今後。これで貴乃花親方は、理事会に出席できる役員待遇からもう一つ下のヒラ委員に落ち、これまで部下だった親方たちの指示を仰がなければいけなくなる。プライドはズタズタだ。
 果たして、貴乃花親方に再び立ち上がり、大相撲界改革を熱く語る気力が残っているか…。

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