葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(91)

掲載日時 2016年02月07日 20時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年2月11日号

◎快楽の1冊
『ブラック・ヴィーナス 投資の女神』 城山真一 宝島社 1500円(本体価格)

 第14回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作である。今年1月に刊行された。経済エンターテインメントだ。主人公は株取引の天才、二礼茜。髪を金髪に染め、服装は黒ずくめだ。株取引はギャンブルの一種と言っていいだろう。勝つか負けるか。儲けられるのか、大損をしてしまうのか。そのハラハラドキドキは競馬やパチンコなどと共通しているところがある。だからこそ株取引にのめり込む人が後を絶たないのだろう。酒、女遊びと同様に賭け事は人を魅了する。
 ただ、茜は常にクールである。商売として株取引を続けている。フリーで、どこの組織にも属していない。借金がかさむなどして経済的に困窮した者が、茜に助けを求める。彼女の株取引の才によって大金をつくってもらい、延命しようと躍起になっている者が依頼をしてくるわけだ。何かしら私立探偵のような立場を彷彿させる。
 主人公は彼女だが、内面はさほど詳しく描かれていない。ミステリアスな存在なのだ。視点の中心人物は百瀬良太という若者。銀行を退職し、県が管轄する職場で金融関係の相談員になった。民間から公務員の立場を選んだのだ。そんな彼が茜と知り合い、彼女の株取引の手腕に驚愕していく、という物語である。
 本作は明らかに手塚治虫の『ブラック・ジャック』に対するオマージュ作品だ。作中、実際に『ブラック・ジャック』のことが書かれていたりもする。手塚作品では、主人公が無免許の医師で法外な治療費を要求するという、ドライな態度をとりながら実はかなりのヒューマニスト、という設定がされている。『ブラック・ヴィーナス』の茜も同様で、淡々とクールに株取引をしているようでありながら、実は人助けを志しているのだ。良太が彼女のヒューマニズムに感動する描写がとてもいい。力作である。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 半年以上前に刊行された書籍だが、抜群に興味をソソられたので紹介したい。『整形した女は幸せになっているのか』(星海社/860円+税)だ。
 著者の北条かやさんは、『キャバ嬢の社会学』(同)の執筆者として話題になった社会派ライター。キャバクラで働く女性の金、男、価値観などに鋭く切り込んだルポが好評だった。その北条さんが、最新の女性ネタとして取り上げたのが「美容整形」である。
 整形は以前よりタブー視されなくなったとはいえ、いまだに批判も多い。だが、潜在的に手術を望んでいる女性は、かなりの数にのぼるらしい。最もニーズが高いのが「目」。ほとんどが、一重まぶたをぱっちり瞳にする手術を受けるという。
 著者の北条さんが、そうした手術経験者に実際に会い、インタビュー。女性の視点から見ると、確かに「愛らしい目」という印象を受けるそうだ。
 問題は、その「愛らしさ」が、他人に伝わるのか…おそらく男から見たら、手術前と後で、さほどの変化は感じないが、彼女たちにとっては「愛らしく」なった、そう信じることが何より重要。つまり整形とは、究極の自己満足であるという結論が浮かび上がってくる。
 そもそも異性にモテたいために、整形を望んだわけでもないという意外な事実も…。手術後に鏡を見て、「この目こそ、私の本来の姿」と、うっとり眺める快感こそが、整形の目的なのである。
 だとしたら、整形美女はホントに幸せだろう。他人の評価より、己が満足できれば、それでいいのだから。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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