菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(148)

掲載日時 2017年04月01日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年4月6日号

◎快楽の1冊
『魂でもいいから、そばにいて -3・11後の霊体験を聞く-』 奥野修司 新潮社 1400円(本体価格)

 ふとした瞬間に突然、ご先祖様の声がして窮地を脱した経験がある人、悩んでいる時に死んだ親の声が聞こえ、アドバイスをもらった人など、世の中には理屈では到底説明できない不思議な体験をしたという人は決して少なくない。しかし、思い切ってその体験を他人に話してみても、大抵は一笑に付され、冗談で済まされてしまう。ところが、そんな霊体験の聞き取りにまじめに取り組み、1冊の書籍にしてしまった作家がいる。
 大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したこともある実力派作家奥野修司の今回の作品は、東日本大震災で亡くなった人の魂と再会した遺族の霊体験をまとめた物語。もちろん幽霊話でもなければホラーでもない。まぎれもないノンフィクションである。
 突然の震災によって人生を断ち切られた人たちにとっては無念この上ないことだが、残された家族もまたやりきれない思いを抱えながらその後の人生を生きている。そんな遺族の日常に、ある日、亡くなった家族からメッセージが届くことがあるというのは、何とも不思議な話ではないか。
 3歳9カ月の息子を亡くした母親は、震災2年後のある日、家族で食事中に息子のおもちゃの自動車が突然動くのを目にした。そしてその後、心の中で同じように息子のことを念じると、再び車が動いたという。また、ある人は亡くなった兄から震災後、突然メールが届くという経験をする。発信されたのは震災前だったというが、なぜそれが今、通知されたのかは誰にも分からない。
 著者はそんな不思議な体験をした人に複数回会い、本当に真実を語っているのか見極めながら取材を進めた。亡き者と生者との不思議な16の物語は、まさに涙なくしては読み進められないほど悲しく、そして愛に満ちている。遺族の復興は終わることはない。
(小倉圭壱/書評家)

【昇天の1冊】
 洋ピンといわれると、本誌読者諸兄はどんな女優を思い浮かべるだろうか? 米国ならシャロン・ケリー、アネット・ヘブン、トレイシー・ローズなどだろうか。仏のサンドラ・ジュリアン、スウェーデンのマリー・フォルサもいるだろう。
 作品でいえば『ディープスロート』が思い出深いという人もいよう。伝説のポルノ男優の30センチ砲を根元まで飲み込むフェラチオは、日本にこの言葉を定着させるのに一役買った。
 または『プッシー・トーク』も。意志を持った女性器が、持ち主の人妻の性体験やトラウマを勝手にしゃべり始めるという、とんでもないフランス製ポルノだった。
 『洋ピン映画史』(彩流社/3000円+税)は、そうした名女優と傑作が日本に進出し、やがて映画館からこつぜんと姿を消すまでの興亡史を丹念に追った1冊だ。黄金時代といわれた70年代から末期の90年代まで、日本の風俗事情の変遷とともにつづった洋ピンのヒストリー本である。
 日本のロマンポルノが演技で見せる擬似セックスだったのに対し、洋ピンは本物の挿入映像だった。合体シーンにはモザイクが施されていたが、愛液と精液が飛び散る様は迫力に満ちていた。筆者の二階堂卓也氏は、それを「過剰なる“欲望”のむきだし」と評する。そう、洋ピンの性描写は日本人が見たことのない獣同士の性交だったといえよう。
 過剰なセックス映像を、ここまでヤルかと過剰にルポした、面白い書籍である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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