岸明日香 2018年12月20日号

話題の1冊 著者インタビュー 八木澤高明 『黄金町マリア 横浜黄金町 路上の娼婦たち』 亜紀書房 2,200円(本体価格)

掲載日時 2015年11月29日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年12月3日号

 −−なぜ、黄金町の娼婦を撮影しようと思ったのですか?

 八木澤 もともと神奈川県生まれで、中学生のときに偶然、この街を通りかかったんです。「何だか面白い街だなぁ」というのが第一印象でしたね。それから15年くらいたったときのこと。たまたまめくっていた雑誌に黄金町の記事が載っていたんです。その記事を見て急に思い出して、もう一度足を運んでみたんです。原色のネオンと「ちょんの間」と呼ばれる店、その軒先に立つ娼婦たち。2000年くらいの頃ですが、正直、こんな場所がいまだにあるということにビックリしました。そして、街の様子や娼婦たちをテーマに、カメラを向けてみようと思いました。

 −−タイやベネズエラなど各国の娼婦を取材していますが、特に印象深かった女性は?

 八木澤 やはりエイズにかかって亡くなった女性のことですね。ある日、取材をしていて「エイズになった女がいる」と聞き、その女性が入院しているという都内の病院へ行きました。実際に会った女性はすでに自力で歩くこともできず、顔にできた肉腫が痛々しかった。でも、カメラを向けると、もうろうとしながらも必死に髪をとかそうとする。その2週間後、彼女は亡くなりました。黄金町には多くの娼婦がいましたが、それぞれが事情を抱えて日本にやってきました。本国で親が病気になったため、金を稼ぎにくる者、貧困で苦しく、より良い生活を求めてやってくる者など、みんな病気が怖いことは知っていますが、金欲しさでつい生でやってしまう。そうやって病気にかかってしまうんですね。

 −−摘発後、黄金町の景色も変わってしまいました。黄金町とはどんな町だったのでしょうか?

 八木澤 2005年に黄金町は警察の一斉摘発を受けました。街で娼婦たちの姿を見ることもなくなり、ネオンも消えました。なんだかキツネに化かされて、まぼろしを見ていたかのような感じでしたね。その当時は「なぜ街を取り潰すんだ」という怒りの気持ちが強かったのですが、今ではそれも時の流れで、仕方ないとも思うようになりました。時代が変われば、街やそこに住んでいる人たちも変わっていきます。昔の街がなくなっても、また違った日常が生まれます。ただ、一つの色街が消えたということでしょうね。私は表舞台ではなくて、世の中の片隅に住んでいる人々に惹かれてしまうんです。黄金町はそんな人々が暮らしている街でしたね。
(聞き手:程原ケン)

八木澤高明(やぎさわ たかあき)
1972年神奈川県生まれ。写真家、ノンフィクション作家。写真週刊誌『フライデー』の専属カメラマンを経てフリーとなる。第19回小学館ノンフィクション大賞で優秀賞を受賞した『マオキッズ−−毛沢東のこどもたちを巡る旅』(小学館)ほか、著書多数。

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