葉加瀬マイ 2018年11月29日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「老後の楽しみ方」を、ついシミュレーション 『オケ老人!』

掲載日時 2016年11月13日 12時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年11月17日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「老後の楽しみ方」を、ついシミュレーション 『オケ老人!』

 期待を1ミリも裏切らない、そしてジャスト予想通りの展開です。
 これが、老若男女が安心して見られる映画として成立しているのは、ひとえに配役の妙。中でも、初主演の杏によるものなのでしょう。彼女はシリアスなドラマであれ、今回のようなコメディーであれ、人を不快にさせない、今や国民的女優ですからね。

 一方、軽いショックを覚えたのは、「老人たち」を演じた役者の顔ぶれです。
 石倉三郎、左とん平、藤田弓子…あぁ、もはやこの世代が老人を演じるようになったかと。これまで自分が老人役として思い描くような役者さんたちは、次々と鬼籍に入られましたから。
 1980年代に『木村家の人びと』というコメディー映画がありました。その中に出てきた老人会の人々、先日、95歳で亡くなられた風見章子さんを最後に、加藤嘉さんらすべての「老人」役の方はいなくなった。
 かくして、今回の映画のような代替わりになるのだな…としみじみ思ってしまいました。

 さて、本作では老人たちがアマチュアオーケストラにゆる〜く興じているのですが、この「老後の楽しみ」の選択肢はアリかもしれないと思わせる力があります。
 老後にゲートボールはやりたくないけど、クラシック音楽は決して嫌いじゃない。自分はもちろん、楽器の一つもたしなまないわけですが、今後、もし試すなら、どの楽器ならできそうとか、つい検討してしまいました。
 超難しそうなバイオリンや、すぐには音が出なさそうな管楽器は無理。でも、その昔、小学校の器楽部でティンパニをかじったことがあるから石倉三郎のコースかな、とほのかな欲求を呼び覚まされます。
 しかし、人と和することが苦手な自分に、ハーモニーを奏でることができるのか。それより前にサークル活動そのものがおっくう。“練習後の飲み会なんか絶対にムリだしなぁ〜”などと、超高齢化社会を生き抜くシミュレーションとして、いいサンプルになるかもしれません。

 アマオケとはいえ、舞台に立つときは、みんなブラックフォーマルに身を包むわけですが、年配者でもビシッと決めると、それなりにサマになるものだなと改めて思いました。
 自分もテレビの『Qさま!!』に出演するときはタキシードを着ますが、ほとんど自前です。最近は、中に着るベストの色合いで季節感を出したりして、少しはこなれてきたかも。昔は結婚式に出席するために礼服を着ていたら、ホテルマンに間違えられたりしたもんですけどね。

画像提供元:(C)2016荒木源・小学館/「オケ老人!」製作委員会

■『オケ老人!』監督/細川徹 出演/杏、黒島結菜、坂口健太郎、笹野高史、左とん平、小松政夫、藤田弓子、石倉三郎、茅島成美、喜多道枝、森下能幸 配給/ファントム・フィルム 11月11日(金)より全国ロードショー。
 梅が岡高校に赴任してきたばかりの数学教師・千鶴(杏)。学生時代からオーケストラでバイオリンを弾いていた彼女は、地元の文化会館で聴いたアマチュアオーケストラの演奏に感動し、入団を決意する。しかし、この町には2つのグループがあり、千鶴は勘違いして、下手くそな老人ばかりが集まる素人オーケストラ「梅が岡交響楽団」に入ってしまう。若者の入団を喜ぶ老人たちを前に、勘違いだと言い出せないまま楽団に参加することになった千鶴は、ついに指揮棒を振るハメに…。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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