鈴木ふみ奈 2018年11月1日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 真贋の見極めは、ことほど左様に難しい! 『嘘八百』

掲載日時 2018年01月21日 12時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年1月25日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 真贋の見極めは、ことほど左様に難しい! 『嘘八百』

 私もB級お宝マニアの1人として、骨董市からヤフオクまで、日々アンテナを張っておりますが、何が本物で何が偽物なのか、迷うものも多いです。ましてや、本作のような国宝級茶器の世界にいたっては、誰がどうやって真贋を見極めているのか、大いに期待して見ました。

 冴えない古物商役の中井貴一、落ちぶれた陶芸家役の佐々木蔵之介以下、芸達者な役者が贅沢に顔を揃え、丁々発止のやりとりが楽しいお宝騒動。惜しむらくは、“幻の利休の茶器”をいかに“本物”に仕立てていくのか、そのディテールを見せてほしかった。
 1960年に発覚した大贋作「永仁の壷」事件なども念頭においたのでは、と思われる脚本は、30稿近くまで練りに練られたとパンフレットにはありましたが、こちらの好奇心を満足させてもらえる贋作づくりの秘技が見えない分、してやったり感が減ってしまった気はします。しかしながら、鑑定業の危うさだけはしっかりと伝わってきました。

 以前、『開運! なんでも鑑定団』で、番組内では国宝級として2500万円と鑑定された茶器が、放送後に専門家からの疑問視する指摘が相次いで、結局、所有者が調査を取り下げた騒ぎがありました。
 一方で最近、ダ・ヴィンチの“幻の作品”が510億円で落札されましたよね。
 まあ、誰かが本物と鑑定したからそんな高値が付くんだと思いますが、実際、危うい世界だと思いますよ。

 私は世田谷のボロ市だけは、毎年、足を運んでいるんですが、いいカモだと思われているのか、眉唾の“お値打ちもの”を薦められることがあります。
 いつだったか、「戦後最大の誘拐事件と言われた『吉展ちゃん事件』の犯人、小原保を捕まえた際の手錠」を見せられました。
 もし本物だったら、昭和史の博物館にあってもいいくらいの代物だと思いますが、さすがに買えませんでした。いったい、どうやって本物だと証明するつもりなんでしょうね。
 自分もいい年なんで、そろそろ収集物の行き先を決める“終活”をせねばという思いと、あと10年くらいは楽しみたいという思いが千々に乱れております。
 …と、ここまで書いて、自分自身の痛恨の「事件」を思い出しました。バブルの頃、手に入れた「マイケルジャクソンがスリラーで着用した赤い皮ジャン」。PVをよく見たら、うちに届いたのと細かい部分が違うじゃありませんか。慌てて問い合わせたら、「仕入れ先が本物だと言っている」と、そんな程度です。ああ、信じた自分が恥ずかしい。

画像提供元:(C)2018「嘘八百」製作委員会

■『嘘八百』監督/武正晴
出演/中井貴一、佐々木蔵之介、友近、森川葵、前野朋哉、堀内敬子、坂田利夫、木下ほうか、塚地武雅、桂雀々、寺田農、芦屋小雁、近藤正臣
配給/ギャガ

 全国公開中。
 千利休を生んだ茶の湯の聖地、大阪・堺。鑑識眼はあるが、大物狙いのために、なかなかお宝に出会えない古物商の則夫(中井貴一)は、腕はいいのに落ちぶれてしまった陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)と出会う。ある大御所鑑定士にいっぱい食わされた2人は結託し、「幻の利休の茶器」を仕立て上げて一攫千金を狙うが、やがて家族や仲間、大御所鑑定士、さらには文化庁までも巻き込む大騒動に発展し…。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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