資産売り尽して黒字を演出!? メディアが褒めちぎるパナソニック復活の幻想

社会・2014/05/29 11:00 / 掲載号 2014年6月5日号

 一時は「破綻寸前」とまで陰口されたパナソニックが復活をアピールした。今年3月決算の連結純利益が1204億円となり、3期ぶりで黒字転換したのだ。昨年、一昨年とも7000億円を超える大赤字に塗れ“凋落のパナ王国”を見せ付けただけに、世間に与えた業績急回復の印象は鮮烈だった。
 ところが決算会見で津賀一宏社長は「(中期経営計画に向けて)想定以上のすべり出しだ」と評価しながらも、「このままの伸びで目標に届くとは思っていない」と付け加えるのを忘れなかった。これは何を意味するのか。

 決算発表に先立つ1カ月前の3月末、同社は2018年度の売上高を10兆円とする中期経営計画を発表した。この計画に沿って今年3月期に7兆7365億円(前期比5.9%増)だった連結売上高を、今期は7兆7500億円(0.2%増)、純利益を1400億円(16.2%増)と見込んでいる。とはいえ、計画に掲げる売上高10兆円は依然として高いハードルである。証券アナリストは「そこに津賀社長の歯切れの悪さが透けてくる」と指摘する。
 「売上高を計画まで一気に引き上げる近道は成長分野でのM&Aです。そのためには財務体質を改善し、信用力を意味する格付けを上げるのが得策です。株式交換にせよ銀行から資金を調達するにせよ、高格付けは大きな武器になる。だからこそ津賀社長は情け容赦ないリストラを断行して黒字化を達成したのですが、自動車関連と住宅分野を除けば将来の成長性に乏しい。リストラに明け暮れてきた彼は会議の席で『その方策で赤字が解消できるのか』が口癖だった。黒字決算にこぎ着いた途端に『これで良かったのか』と疑心暗鬼になった側面は否定できません」

 この数年来、パナソニックは赤字事業に大ナタを振るい、延命策に汲々としてきた。赤字の元凶と目されたプラズマ事業からの撤退、半導体の相次ぐ閉鎖と大幅な人員削減、さらには東京の汐留ビル、旧東京本社ビルなども売却した。その揚げ句、昨年暮れには数少ない黒字事業のヘルスケア事業を米投資ファンドに約1650億円で売却している。
 「もしヘルスケア事業を売却しなかったら、今年3月期のパナは実質的に赤字決算だった。逆に言うと、ヘルスケアの売却で津賀社長は辛うじて面目を保った。これぞ彼の記者会見の歯切れの悪さの理由ですが、会場にいた大半の記者は津賀社長への配慮もあってダンマリを決め込んだのです」(前出・アナリスト)

 同社のヘルスケア事業は補聴器や血糖値測定センサー、電子カルテシステムなどを手掛け、'12年3月期に売上高1336億円、営業利益88億円を確保した優良事業である。ところが津賀社長が強力に進めた“ノンコア(非中核)事業見直し”政策の下、「利益が出ていても、一段の事業強化には研究開発費や補完事業の買収などで多額の資金が必要、との理由で売却が決まった」(関係者)という。その裏に、売却マネーが転がり込めば決算に大きく寄与するとの打算があったのは疑う余地がない。
 果たせるかな、大手格付け会社のフィッチは5月13日、昨年秋にソニーともども「投機的」水準、即ち“ジャンク債”まで引き下げたパナソニックの格付けを、投資適格水準の最下位レベルまで引き上げた(ソニーについては変更なし)。一方、ムーディーズは1月にソニーの格付けをジャンク債に引き下げたが、パナソニックについては投資適格ランキングの最下位に据え置き、4月になって「今後1年から1年半はソニーを上回る状態を維持する」との見解を発表した。

 世間の目にどう映ろうと、恥も外聞もない決算対策が格付け会社から一定の評価を受けた格好である。
 「津賀社長が矢継ぎ早の大型リストラにまい進した最大の狙いは、黒字決算を実現することで格付けを引き上げることです。しかし、さらなる格上げは小細工が利かない。将来戦略の柱の一つに位置づけている住宅事業は、テイ良く乗っ取った旧パナソニック電工の得意分野で、旧松下電器のプロパー社員には“外様”事業。これでノウハウを持つ旧電工サイドが反発したら、もう悲劇です」(パナOB)

 もう一つの柱に据えているのは電気自動車(EV)に代表される自動車用電池事業だが、現時点では「市場の期待が先行している」(関係者)のが実情。それどころか米ベンチャー企業のテスラモーターズとタッグを組んだはいいが、業界筋は「シタタカさでは先方が一枚も二枚も上手。パナは物わかりのいいスポンサーになりかねない」と警告する。
 これで2本柱の一方、もしくは双方が頓挫したらパナソニックはどうなるか。黒字決算の演出でニンマリする津賀社長にとって、クリアすべきハードルは予想以上に高いようだ。

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