中島史恵 2018年8月23・30日合併号

話題の1冊 著者インタビュー 日比野恭三 『最強部活の作り方 名門26校探訪』 文藝春秋 1,650円(本体価格)

掲載日時 2018年06月10日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年6月14日号

 ――スポーツ庁が“週休2日”“平日2時間”などの指針を公表し、部活のあり方が変わろうとしています。実際に26校の部活を訪れ、どのように感じましたか?

 日比野 最近“ブラック部活”が問題になっていますが、スポーツは本来的に勝利至上を掲げるものなので、強くなるために練習が厳しくなるのはある種必然です。大切なのは、やりすぎを防ぐために「どこでブレーキを踏むか」。私が訪れた高校の監督たちは、当然、ルールの枠組み内で指導していましたが、それでもやりすぎだというのであれば、制度を変える必要がある。生徒たちも“日本一”という共通の目標があるため、やらされているのではなく、自ら率先して真面目に練習に取り組んでいました。私の見た限りでは、ブラックな部分を感じることはありませんでしたね。
 最近の部活は少子化の影響もあって、きつい練習で生徒が辞めてしまうと、代わりがいないという事態にもなりかねません。かつての勝ち残った精鋭メンバーで大会に出場するといったやり方は難しくなってきている。また、情報化が進み、生徒たちも部のことはよく知った上で入ってきますから、練習が嫌で辞める生徒は少ないようです。

 ――強豪校の指導者を取材してみて、共通する部分はありましたか?

 日比野 最初から順風満帆で成功した人はいないと言っていいでしょう。スパルタで指導していたがうまくいかず、手痛い失敗体験を経て結果を残して来た人は多いです。特に私立の場合は、何十年にも渡り指導を続けている監督・コーチもいて、その教え子も全国各地に多数います。その教え子が地元のクラブから母校に優秀な選手を送って来るなど、一つの“ファミリーネットワーク”ができているケースもあります。
 県立の場合はなかなか優秀な選手を集めることが難しいのですが、広島県の世羅高校陸上競技部のように、町が寄付金を集め、地域が一体となってバックアップしているケースもあります。

 ――全国の有力選手を集める高校に批判もありますが、どう思いますか?

 日比野 近年は国境を越えてやってくる留学生も多いですね。感情論で考えると“ズルい”と思いがちですが、制度として認められている範囲ならば“アリ”でしょう。
 世羅高にはケニア人留学生がいますが、裸一貫でやってくる彼らの覚悟や懸命さから、日本人の生徒たちが学ぶべきものはたくさんあります。そうしたポジティブな側面にも目を向けるべきなのではないかと思います。
(聞き手/程原ケン)

日比野恭三(ひびの・きょうぞう)
1981年、宮崎県生まれ。'01年東京大学理科二類入学、同年退学。'10年『Number』編集部の契約編集者に。'16年にフリーのライターとして独立。

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