葉加瀬マイ 2018年11月29日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第196回 なぜ、経済成長が必要なのか?

掲載日時 2016年11月11日 14時00分 [政治] / 掲載号 2016年11月17日号

 日本には、いまだに「経済成長」を否定する人々が蠢いている。彼らいわく、
 「日本は経済成長する必要はない」「日本はもう十分に豊かだ」「これからは経済的な豊かさではなく、心の豊かさを求めるべきだ」
 などなどレトリックは異なるのだが、経済成長、すなわち「GDPの拡大の追求」を否定していることに変わりはない。彼らの成長否定の考え方は、わが国の「亡国」に直結するという事実をぜひとも知ってほしい。

 国民はモノやサービスという付加価値を生産し、顧客に消費、投資という需要として支出してもらい、所得を稼ぐ。所得創出のプロセスにおいて、生産、需要、所得の三つは必ずイコールになる。
 そして、国内の「すべての生産」がGDPである。GDPとは、実は国内の生産の合計であり、需要の合計であり、同時に所得の合計でもあるのだ。
 わが国の所得の合計で「も」あるGDPが世界に占めるシェアの推移を見ると、左ページの図(※帆本誌参照)の通りとなる。
 1997年の橋本龍太郎政権の緊縮財政で日本経済がデフレ化する以前、わが国のGDPは一国で世界の17%超を占めていた。その後、日本のGDPシェアはひたすら落ちていき、2015年には5.6%にまで凋落してしまう。'97年以降も世界経済は普通に成長していったにもかかわらず、わが国はデフレーションによりGDPが拡大しない状況が続いたためだ。

 '13年以降は、円安の影響もあるため、'16年は多少戻すかもしれないが、それにしても「凋落著しい」としか表現のしようがない。このまま日本のGDPが世界に占めるシェアが縮小していくと、いかなる事態になるのか。
 日本がデフレーションと低成長を続け、世界各国が普通に今まで通りの成長を続けると、2040年には日本のGDPシェアは世界の2%前後に縮小することになる。もはや経済大国でも何でもなく、普通に発展途上国である。
 発展途上国化すると、日本人の所得および日本国内の物価が、諸外国から見ると割安になる。逆に言えば、日本人は世界各国がグローバルなマーケットで買うモノやサービスを買えなくなってしまう。

 わが国は資源輸入国である。日本のGDPシェアが縮小し、国家としての購買力が減ってしまうと、やがては資源輸入すらおぼつかなくなり、衰退に拍車が掛かる。国内で生産されるモノやサービスは安い割に、輸入に頼らざるを得ないガソリンなどの価格は高騰する。国民は自動車を走らせるためのガソリンを入手することすら四苦八苦するだろう。まさに発展途上国だ。
 また、物価が安い日本に外国人観光客が押し寄せる程度ならともかく、外国資本が殺到することになる。虎の子の日本企業は次々に外国資本に買収され、国内の安い賃金目当てに対内直接投資(外国資本の日本への投資)が相次ぎ、わが国は外国に毎年、巨額の所得収支を吸い上げられる構造になる。

 実は、この構造はイギリス領インド帝国に代表される「植民地」そのままだ。
 イギリス領インド帝国では、「鉄道」までもがイギリス資本の支配下にあった。しかも、鉄道事業が赤字になったとしても、インド住民の税金から配当金がイギリス本国の資本家に支払われたのである。
 さらに言うならば、GDPシェア縮小で外国資本の植民地と化した場合の日本国では、まともな就職先が外資系企業しかない、という状況に至る。当然ながら、外資系企業では「英語」を話すことを求められる。
 かつてインド帝国でインド人官僚が英語を話すことを強いられたように、われわれ日本国民は日本語ではなく、英語を「生きるために」学ぶ羽目になるだろう。高等教育も日本語は消え、英語のみで提供されるようにならざるを得ない。
 そうなれば、世界に冠たる「日本の文化」は消滅の危機を迎える。お分かりだろうが、日本の文化は「日本語」と密接な関係がある。日本語が使われなくなる状況で、われわれは日本文化を受け継ぎ、引き継ぎ、発展させることはできない。

 すでにして、安倍政権は「英語教育」を強化している。現在の日本における英語教育推進は、筆者には「植民地化への道」にしか見えない。つまりは、亡国路線だ。
 亡国といえば、財政規模はGDPと相関関係にある。理由は、GDPが所得の合計であり、われわれは所得から税金を支払うためだ。GDPと税収は、ほぼ比例する。
 日本のGDPのシェアが世界の2%前後に落ちたとき、中国のそれは20%に達しているだろう。GDPの規模が十倍となると、軍事支出の割合が高い中国とでは、国防予算に15倍〜20倍の開きがつくことになる。
 その場合、わが国の防衛安全保障はどうなるだろうか。どうにもならない。日本国は普通に中国の属国と化す。

 ここまで述べた通り、経済成長を否定する発想、あるいはデフレーションを受け入れる発想は、わが国を「発展途上国」と化し、誇り高き日本文化を消滅せしめ、さらには最終的には中国の属国と化す亡国の道なのだ。それにもかかわらず、日本国内には経済成長を否定する負け犬根性の人々が少なくない。というよりも、日本国民の多数派がそうなのではないか?
 日本国はデフレから脱却しさえすれば「自国の力」で十分に経済成長を達成することが可能な大国だ。ところが、負け犬根性の成長否定論者たちが、正しいデフレ対策を妨害してくる。
 成長否定論者たちの「日本は経済成長しない。する必要はない」といった勝手な思い込みこそが、日本国を亡国に追いやる。日本国の未来を守りたいならば、成長否定論を否定しなければならない。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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