葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(211)

掲載日時 2018年07月14日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年7月19日号

◎快楽の1冊
『芸人「幸福」論 格差社会でゴキゲンに生きる!』
プチ鹿島 KKベストセラーズ 1250円(本体価格)

 「働き方改革」が叫ばれ、随所で人手不足が嘆かれる昨今、はっきり言って筆者も含めた余剰人員が過度に、いや最も多いのがお笑い界かもしれない。
 本書は島田洋七(B&B)師のような大看板から今を時めく売れっ子たち、あるいは俗に“一発屋”などとくくられてしまいがちな面々、さらに世間的にはほぼ無名(失礼!)に等しい芸人に至るまで、その人生を幅広く取材。著者自ら、のっけからタネを明かすごとく、文体と筆致が完全に『Number』的スポーツ・ノンフィクションライター風なのも洒落が効いている。
 著者の人選の妙にもよるのだろうが、いわゆるブレイク真っ最中の芸人の話はいたって冷静で、売れてはいないが年齢的には熟れている芸人の語りが、おかしな自虐に走らず全くクサっていないのも清々しい。
 五十の坂を越えてから大輪の花を本格的に咲かせた綾小路きみまろ師や、その昔は浪曲の広沢瓢右衛門師など古希をすぎた最晩年のひとつ手前で狂い咲きの歴史を思えば、つくづく何が起こるか分からないのがこの業界。本書中に登場する“遅れて来すぎた新人”漫才コンビの「めいどのみやげ」などいっそかわいらしいほどだ。何しろ昭和10年生まれ83歳の父とその娘の、実の親子で組んだ姿は何だか見ているだけでほんわかと楽しい。
 著者が一番書きたかったと記す冷蔵庫マン(段ボールで作った冷蔵庫の被りものに身を包み、ひたすら寒いダジャレを連発するのが持ち味)こと飯塚俊太郎氏とは筆者も長い仲。今年57歳の彼が某日、高校の同窓会に行ったという。感想を聞く筆者に遠くを見るような目で答えた彼の台詞が「走り続けているのは、俺だけでしたね」。ライブをぜひ、ご覧あれ。(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 AV男優の“しみけん”というと、最近ではコラムニストや著述家としての活動も目立つ。そんな人気男優が熟女の魅力について熱〜く語った1冊が『やっぱり熟女がいちばんでした。』(KADOKAWA/1300円+税)
 しかも、ただの熟女ではない。北条麻妃、川上ゆう、一条綺美香、白木優子と、名前を聞けば顔が浮かぶメジャー級のAV女優たちとの対談集だ。
 女を引き出すことに長けているだけあって、女優たちが皆、赤裸々に過去の体験を語っており、それだけで読み応えは十分だ。
 自転車でラブホに通いつめた思い出が懐かしいという庶民的な北条、血液型によってセックスに違いがあるのではないかと必死で研究した哲学肌の川上、放尿シーンの撮影が死ぬほど恥ずかしかったフツーの女性の一条…などなど。
 50歳をすぎて「自分を解放したい」という理由からデビューした妖艶五十路・宝田さゆりの自由奔放さにも、女のしなやかな力強ささえ感じる。
 ホスト役のしみけんも好感度◎だ。彼女たちの魅力を「熟女は相手ファースト」(男を気持ちよくすることが第一主義という意)、「母親に近い年齢なのにエロい」と看破し、世の男の心理を的確に突いている。
 年齢を重ねて培ったさまざまな経験が熟女の性に表われ、男を包み込むような“癒し”に満ちているというわけだ。
 熟女人気は、もはや一過性のものではない。男にとって普遍的な色香を持つ存在だと、改めて認識できる。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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