RaMu 2018年12月27日号

本好きリビドー(28)

掲載日時 2014年11月02日 17時00分 [エンタメ] / 掲載号 2014年11月6日号

◎快楽の1冊
『神様の裏の顔』 藤崎翔 角川書店 1500円(本体価格)

 横溝正史ミステリ大賞は1980年に創設された。過去の受賞者には服部まゆみ、柴田よしき、山田宗樹などがいる。本書は今年4月に決定した同賞受賞作である。
 作者は'85年生まれだ。もともとは高校卒業後、2010年までコンビでお笑い芸人をしていた人である。コントや漫才は今やクリエーティブな仕事として世の中に認知されている感が強い。振り返れば'80年に起きたMANZAIブーム以前、お笑い芸人は俳優などに比べれば格下、と一般的に捉えられていたように思う。実際、芸人たちが観客たちに向けて、自分を卑下するような態度を取っている姿をテレビの寄席中継で見た記憶がある。しかしMANZAIブームによって状況は変わった。やはりビートたけしの出現が大きかったのだろう。人に笑ってもらうのではない、笑わせるのだ、という気構えが彼の攻撃的な語りには充満しており、多くの若者が憧れた。結果、いつしかお笑いはカッコイイ、役者やミュージシャンに匹敵する創造的な仕事だ、というイメージが世の中に浸透していった。確かに何かしら既成のものをからかうという態度には反抗の精神が含まれているわけで、ある種ロックやジャズとも通じる。
 本作はこの反抗精神がうかがえる、ブラックで笑える力作だ。物語は生前完璧な人格者として誰からも尊敬されていた元校長先生・坪井誠造の通夜で幕を開ける。彼と何らかの関係を持っていた参列者たちの回想でストーリーは進んでいく。主人公は特定されておらず、かつての坪井の教え子、同僚だった教師、近所に住む主婦などの独白が入れ替わり立ち替わりつづられ、そして次第に人格者が実は裏ではものすごい悪人だったのではないか、という疑いが出てくるのである。このプロセスがとにかくスリリングで笑えて面白い。間違いなく力作である。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 あの人妻や独身のアラサー&アラフォー女性が、人には絶対言えないセックスの悩みを抱えている。
 男性誌やアダルトビデオでは興味本位で語られがちな“ネタ”だが、こうした女性の心の“闇”に踏み込んだ書籍は思ったほど多くない。
 宝島社の新書『モンスターウーマン』(770円+税)は、1000人に及ぶ女性への取材を通じ、現代女性の性の深淵を浮き彫りにした力作だ。“ヤリマン”のセックス依存症から、逆にセックスを嫌悪し三十路を過ぎてもいまだに処女という、どこかズレている女性たちを「モンスターウーマン」と定義。その性行動や性意識を綿密に解析している。著者はノンフィクションライターの大場真代氏。診療内科勤務を経て執筆業に転身した方だ。
 「セックスでキレイになりたい女たち」「イケない、濡れない、感じない…女性を悩ます女性版ED」など、セックスマニュアルのような見出しがズラリと並ぶが、本来、こうした問題はタブーであったはず。そこを軽々と飛び越え“モンスター”と化すフツーの女性が急増している理由は何なのか−−。社会情勢の変化等を基に分析していて、読み応え十分である。
 読後感は、「モンスターウーマン」とは氾濫するセックス情報に煽られ過ぎて自分を完全に見失っている女たち、という結論に達する。
 そこで思うのは、この書籍、女性よりもむしろ男こそが読むべきだろうということ。複雑な女の内面を、少しでもひもとく一助となるだろう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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