林ゆめ 2018年12月6日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 あきれた中小企業支援策

掲載日時 2015年12月22日 10時00分 [政治] / 掲載号 2015年12月31日号

 政府が赤字の中小企業の投資を支援する減税策を決めたと、新聞・テレビが大きく報じた。
 これまで、大都市・大企業・富裕層優遇の施策一辺倒だった安倍晋三政権が、方向転換を図ったのかと一瞬思ったのだが、その内容は、あきれるほど貧弱なものだった。

 政府・与党が12月6日に決めた中小企業向け投資減税は、中小企業が機械や装置の新規投資をした場合、その機械・装置にかかわる固定資産税を、3年間にわたって半減させるというものだ。甘利明経済再生担当相は、「利益に関係なく支払っている固定資産税を減税すれば、赤字企業でも設備投資のメリットが出てくる」と記者団に語った。
 中小企業の大部分は赤字で法人税を納めていないから、法人税率を下げても恩恵は受けられない。その点、固定資産税を半減させれば、中小企業にも恩恵が行き渡る。そのこと自体は正しい。
 しかし、今回の減税はあくまでも機械・装置の新規投資分だけが対象となり、建物は対象にならない。つまり、減税となるのは、主として製造業ということになる。
 ところが、中小企業のなかで製造業が占める割合は11%に過ぎない。大部分の中小企業は減税の蚊帳の外に置かれるのだ。
 また、固定資産税の標準的な税率は1.4%だから、この投資減税による負担減は、新規投資の0.7%に過ぎない。減税額としては非常に小さなものなのだ。その証拠に、この投資減税の財源は200億円を下回ると報じられている。

 一方、大企業に恩恵をもたらす法人税減税は、来年度から実効税率が29.97%に引き下げられる。第二次安倍政権が発足したときの法人税の実効税率は40.69%だった。つまり政権発足後に税率を10.72%引き下げることになる。法人税は1%下げると4000億円の減収になるから、4兆2880億円という巨大な減税になる。これは、中小企業の投資減税の214倍の規模だ。しかも、今回の法人税減税の財源の一部は、外形標準課税の強化で賄われる。
 外形標準課税というのは、大企業の法人事業税の算定の際に用いられている税金で、資本金、支払い利子、給与、家賃などに基づいて算定される。つまり、赤字企業でも支払わなければならない税金だ。それを大幅に強化するのだ。
 つまり、今回の税制改革で安倍内閣が行おうとしているのは、大きな利益を出している勝ち組大企業を減税する代わりに、赤字の大企業を増税し、消費税の増税で庶民や中小企業を痛めつけるという税制改革なのだ。

 さらに安倍政権は、来年に、お年寄りを中心に1人3万円を配る「臨時給付金」の支給案を与党に示した。1250万人が給付の対象になる。
 この給付金の目的は、来年の参議院選挙に向けてのバラマキであることは間違いない。

 こんな滅茶苦茶な税制改革が行われているのに、最近の内閣支持率は、大幅な上昇を示している。そのことは、大本営発表を垂れ流し続けているメディアの責任だと私は思っている。このまま本質を捉えた報道がなくなれば、民主主義は終わりだ。

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