腸内細菌が顕著に減っている日本人 過剰な清潔志向きれいな社会は体に悪い!(1)

健康・2012/04/09 12:00 / 掲載号 2012年4月12日号

 これまでこのコーナーでは、さまざまな病気を扱ってきた。年度末でもある今週は、これまでの病気、特にアレルギー疾患を中心に東京医科歯科大学名誉教授であり医学博士の藤田紘一郎氏に、自身の経験を交えて総括してもらった。同氏は寄生虫の権威でもあり、インターン時代、そして嘱託医時代のインドネシア勤務当時はウンチの研究に没頭していたという。

 花粉症が日本で初めて認められたのは1963年。アトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくと共に、'60年代後半から現在に至るまで増加を続けています。'40〜'50年代、私が子供の頃は杉の実を使った『スギ鉄砲』で遊んでいて、みんな大量にスギ花粉を浴びていましたが、誰も花粉症などなりませんでした。
 その頃、日本人は誰しも寄生虫の一種である回虫を持っていました。戦後、日本に来た米軍兵が日本の野菜を食べたら、寄生虫がわんさと出てきた。「これは不潔だ」ということで、進駐軍主導で寄生虫予防法が作られ、全員学校で検便・駆虫をやらされました。
 寄生虫が減るのと反比例して花粉症などのアレルギーが増えたので、寄生虫が何かいいことをしているんじゃないかと思って研究を始めました。結局、'81年に寄生虫のアレルギー抑制効果を発見するのですが、日本の学会からは無視されます。抗菌グッズメーカーからも、激しいバッシングにあいました。そこで『笑うカイチュウ』(講談社)などの本を出すことで、一般の方々に人間と寄生虫の共生関係をアピールし続けてきたのです。

 寄生虫はみな悪者か、というとそうではありません。私は15年間、研究のためにサナダムシをお腹の中に飼っていました。サナダムシは私の身体の中で卵を産み、生き続けます。もし、そのサナダムシが悪影響を私に与えて宿主である私を殺してしまっては、必然的にサナダムシも死んでしまう。ですから、サナダムシはそんなことは絶対にしないのです。
 寄生虫は一人では生きられないので、必ず宿主が必要です。だから宿主を大切にする。人の寄生虫は人を大切にし、動物の寄生虫は動物を大切にします。

 インドネシアのカリマンタン島に赴任した時のことです。行ってみて驚きました。現地の人は川でウンチをして、その川で洗濯をして、子どもは水浴びをしている。私の家のトイレも川の上にあって、ウンチをすると魚が競って食べにきました。
 さすがに早く帰国したくなりましたが、驚いたことに現地の子どもたちにはアトピーも喘息もまるでないのです。大人もみんなおおらかで優しく、うつ病の人もいませんでした。
 首都ジャカルタのほうが衛生状態が良いにもかかわらず、カリマンタン島の子どもたちよりも、腸チフスなどの経口感染症にかかる率が高かった。川の水を調べてみると、ジャカルタの水道水より病原菌の数がはるかに少ない。川の水は多様な微生物で満ちていて、病原体だけが増殖することはなかったんですね。
 それ以来、毎年インドネシアに行きましたし、これまで70カ国以上の発展途上国を訪れました。現地の飲み水の検査をし、感染症の調査をしました。そして、なぜアレルギー疾患がないのかを調べたら、みんな寄生虫を持っていたんです。

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