菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第172回 いわゆる『国の借金』が130兆円減った!

掲載日時 2016年04月29日 14時00分 [政治] / 掲載号 2016年5月5日号

 IMF(国際通貨基金)が日本経済の成長率の見通しについて、2016年は+0.5%、'17年は▲0.1%に引き下げた。'17年の経済成長率についてマイナスと予測された先進国は、もちろんわが国のみである。
 いよいよ消費税増税の見送りと、大々的な財政政策の拡大が必須の状況になってきたわけだが、例により、
 「わが国は莫大な借金を抱えているため、消費税を増税するしかない。大規模財政政策の拡大もできない」
 などと、間違った認識から逃れられない国民が少なくないため、本稿で“朗報”をお伝えしておこう。何と、日本政府の負債、いわゆる「国の借金」は、ピーク時と比べて130兆円以上も減っているのだ。しかも、130兆円の減少とは'15年末時点であるため、現在はさらに減っていること確実である。
 いわゆる「国の借金」を130兆円超も減らしたのは、何を隠そう安倍政権なのである。安倍政権の経済政策は「国民が豊かになる」経世済民という点では、逆方向にまい進するタイプばかりだ。とはいえ、安倍政権発足後の「量的緩和」政策が、日本政府の実質的な負債を恐るべき勢いで減らしているのもまた、間違いのない事実なのである。

 まずは基本を押さえてほしいのだが、わが国は「国家全体」として見ると、世界一のお金持ち国家だ。日本の民間、政府が保有する対外資産から対外負債を差し引いた対外純資産は、'14年末時点で366兆8560億円に達し、文句なしで世界最大だ。日本は国家として見れば、世界一のお金持ち国家なのである。
 そのお金持ち国家日本の「中」において、政府が民間から借りているのが、いわゆる「国の借金」、正しくは「政府の負債」である。日本政府の負債について、「国の借金」あるいは「日本の借金」と呼ぶのは、明確な間違いだ。
 そして、日本政府の「国内の民間」からの負債は1000兆円を超えており、確かに巨額ではあるのだが、100%日本円建てだ。なぜ、日本円建てなのかと言えば、わが国は「貯蓄過剰」を意味する経常収支黒字国で、政府は普通に日本円建てで資金調達可能であるためである。ついでに書いておくと、対外純資産とは経常収支黒字の蓄積になる(統計的にそうなっている)。わが国が世界一のお金持ち国家であるのは、長年、経常収支の黒字を続けてきたためだ。

 ところで、日本政府は日本銀行という素晴らしい「子会社」を持っている。これは定性的な話ではなく、本当に日本銀行の株式の55%を日本政府が持っているのだ。日本政府は、日本銀行の親会社に該当する。
 日本政府は子会社の日本銀行に日本円を発行させ、市中銀行などが保有する国債を買い取ることで、実質的に借金を返済することが可能なのだ。何しろ、親会社-子会社間のおカネの貸し借りは、連結決算で相殺されてしまう。別に、日本政府が日本銀行保有の国債について返済しても一向に構わないが、しなくても構わない。利払いも同様だ。いずれにせよ、連結決算で相殺となる。

 現在、日本銀行は「量的緩和」政策を継続しており、年間の純増80兆円という驚異的とも言うべきペースで市中銀行から国債を買い取っている。もちろん、黒田日銀は「デフレ対策」として量的緩和を実施しているわけだが、現実の話として日本政府が過去におカネを借りる際に発行した借用証書(国債)の保有者が、民間銀行から日本銀行へと移っている。
 下図(※本誌参照)の通り、日本政府が実質的に抱える負債、すなわち「日銀以外」が保有する国債・財投債・国庫短期証券は、'12年9月に731.3兆円でピークを打った。その後、黒田日銀が発足し、量的緩和政策が拡大したことで、'15年末には601.5兆円にまで減少した。すなわち、日本政府は子会社の日銀の国債を買い取らせることで、実質的な負債を130兆円も減らしてしまったのだ。
 しかも、これはあくまで'15年末時点の数字だ。その後も量的緩和政策は継続しているため、日本政府の実質的な負債がさらに減っていることは疑いない。

 ちなみに、この手の話をすると、
 「日本銀行が保有している国債はどうするんだ! 結局は返済する必要があるはずだ!」
 などと突っ込まれるわけだが、子会社から借りている負債など、日本滅亡の日まで放っておけばいい。いずれにせよ、連結決算で相殺される。
 あるいは、どうしても日本銀行が「負債としての国債」を保有していることが気になるのであれば、償還期限が来たものから政府発行の「無利子無期限国債」と交換していけばいい。無利子、無期限の国債となれば、これは現金紙幣と同じになるため、さすがに「借金」扱いすることは不可能になる。
 無論、日本銀行は売りオペレーション(国債を売却し、マネタリーベースを回収する)のために、ある程度の国債は保有していなければならない。とはいえ、現時点で日本国債の3割強が日本銀行に保有されている状況なのだ。さすがに、多過ぎる。
 というわけで、日銀のオペレーションのために必要な分を残し、日銀保有国債は順次、無利子無期限国債と交換していけばいいのである。結果的に、日本政府の負債は実質的にはもちろん、名目的にも「消える」という話になる。

 前述の通り、政府とは通貨を発行することが可能な存在なのだ。インフレ率が低迷している以上、日本政府には実質的に財政問題は存在しない。現実に、日銀の量的緩和政策の影響で、政府の実質的な負債は着実に減少していっている。
 問題は「財政」ではなく「需要不足」であるという現実を、そろそろ日本国民や日本政府は認識するべき時期だ。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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