葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(154)

掲載日時 2017年05月20日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年5月25日号

◎快楽の1冊
『ゾンビ論』 伊東美和/山崎圭司/中原昌也 洋泉社 1400円(本体価格)

 “♪牛丼一筋80年、早いの、うまいの、安いの〜”が𠮷野家なら、ゾンビ一筋50年、怖いの、動くの、ヤバいのがジョージ・A・ロメロ監督だ。
 故・団鬼六氏がSMという言葉について市民権を飛び越えて一般的な日常語にまで昇華させたごとく(「あたしってドSだからぁ」と叫ぶ女子高生を先日も地下鉄で目撃)、ゾンビといえば青ざめた顔の死体が生身の人間を求めてさまよい歩き、その肉をむさぼり喰う。たとえ喰われなくても噛まれただけで彼らの同類となる伝染性があり、動きを止めるためには頭部ごと切断するか、脳を撃ち抜くしかない…。こうした共通了解を「吸血鬼はニンニクと十字架と日光がNG」と同じくらい常識として定着させるすべての源、決定版となったのが、1979年公開の同監督作品『ゾンビ(原題はDAWN OF THE DEAD「死者の夜明け」)』。
 そもそも「生ける屍」とは何か? ルーツをたどればブードゥー教絡みで西アフリカにさかのぼる。それが海を渡って中米のハイチで、ある種の文化呪術的風習として伝承された歴史的背景(中には仮死状態の人間を呪術師が蘇生させて意のままに操る場合も)を明らかにしつつ、なぜ今日のモダン・ゾンビの形に進化したかを説く本書からは、得ることが多い。
 ロメロ監督の第1次発想がR・マシスンの小説『地球最後の男』のイタダキであることや、ひたすら観客を怖がらせるだけが目的だったはずの製作意図が、ベトナム戦争終結後の時代相に乗って批評家の深読みを招き(“黙示録的描写だ! とか”)、つられた監督のその後の新作ゾンビ映画が次第に観念的になっていく過程には若干の苦笑い。
 それにしても、日本に及ぼした影響だって甚大なジャンル。なにせ「実録外伝ゾンビ極道」までかつて封切られたのだから。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 『不倫の教科書』(イースト・プレス/1300円+税)というタイトルの本を書店で見かけたので読んでみた。すると、「こうすれば上手に不倫できる」という内容ではなく、「これをやってはヤバイ」という項目がズラリと並んでいる。「不倫にLINEを利用するとバレやすい」「リベンジポルノとストーカー」「自宅に不倫相手を招き入れることの愚かさ」「不倫相手の妊娠」等々、セックス抜きには成立しない男女関係だけに、トラブルも多いらしいのである。
 ドロ沼に陥りやすいケースも紹介されている。その一つが、妻が妊娠中に不倫に走る夫。妻にとって、自分が妊娠している最中に夫が他の女を抱いているなんて許し難い。結果、バレたら妻の非情な報復が待っているというワケだ。
 また、不倫が発覚した時にダメージをこうむる職業も記載されている。一例を紹介すると教師。先生と保護者との不埒な関係、あるいは親しい教員同士が不倫関係に発展するケースなど、最悪の場合、バレたら懲戒免職もあり得るのに、学校を舞台とした不倫は意外にも少なくないという。
 つまり不倫とは、それだけリスクの高い男女関係なのだが、それでも止められない。なぜか? 本書は哲学者のニーチェの言葉を引用している。「男が本当に好きなものは二つ。危険と遊びである」から、と。
 著者は弁護士の長谷川裕雅氏。サザエさん一家をテーマとしたヒット作『磯野家の相続』で知られる法律の専門家だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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