名医・博士の健康術 ★今週のテーマ 血糖値が下がる簡単! 筋肉運動

健康・2019/12/12 12:00 / 掲載号 2019年12月19日号
名医・博士の健康術 ★今週のテーマ 血糖値が下がる簡単! 筋肉運動

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 ジョギングや過酷な食事制限よりも効果大で続けやすい!週2日の“ずぼらスクワット”で糖尿病は改善する!!

 糖尿病の治療では、薬での治療と食事療法がクローズアップされることが多く、運動療法は見すごされがちだ。しかし、血糖降下剤を服用せず、また、過酷な食事制限をしなくても、運動療法で血糖値を安定させることができる。

 運動療法といえば、ウォーキングを中心とする有酸素運動(酸素を必要とする運動)をお勧めする内科医がほとんどだが、うさみ内科院長の宇佐見啓治先生は、「ウォーキングは糖尿病の運動療法には向いていない」と断言する。
「歩くだけでは糖の燃焼の効率が悪く、代謝(体内で行われる化学反応)もあまりアップしません。また、高齢者は足腰が衰えているので、歩行中に転倒する恐れもあります。こうした点から、私は『有酸素運動を行っても、糖尿病体質の改善にはつながりにくい』と考えています」(宇佐見先生)

 それでは、どのような運動がよいのか? 宇佐見先生は、「筋肉を積極的に動かすと血糖値が下がるので、筋トレなどの無酸素運動がお勧め」と説く。
「私は、糖尿病は筋肉の糖代謝が低下して起こる病気だと確信しています。糖質を摂ると、腸から吸収された糖はブドウ糖になり、腹部臓器や脂肪組織、筋肉、脳に取り込まれます。この中で、ブドウ糖の取り込みの大部分を占めるのは、エネルギーの消費量が多い筋肉です。しかし、筋肉でのブドウ糖の取り込み率(糖代謝)が低いと、十分に取り込まれないまま血液中にあふれてしまい、糖尿病を発症させてしまうのです」(宇佐見先生)

★大きな筋肉を徐々に動かす

 また、筋肉の衰えも糖尿病の発症につながる重大な要因の1つだ。それは、血糖の調整をする「インスリン」というホルモンとの関係からも、見て取ることができる。
「インスリンは、ブドウ糖を細胞内に取り込む時に必要なもので、今までは、『糖尿病はインスリンの効きが悪くなったり、分泌量が減るなどして血糖値が下がりにくくなった結果、起こるようになる』と考えられていました。ところが、筋トレを行った時のエネルギー消費を調べたところ、筋トレ後にインスリンを使わなくても、ブドウ糖を筋肉の細胞に取り込めることが分かりました。つまり、筋トレをやれば、糖の代謝がアップするだけでなく、インスリンを使わずに血糖値を下げ、糖尿病体質を一掃させることができるのです」(宇佐見先生)

 とはいえ、糖尿病の改善だけが目的なら、ストイックに筋肉量を増やす必要はない。筋肉に蓄えられているエネルギー源のグリコーゲンを使い切れば、筋肉にブドウ糖が取り込まれにくい状態(インスリン抵抗性)が改善し、血糖値も自ずと下がっていくので、大きな筋肉をゆっくりと動かして、効率よくグリコーゲンを消費するようにしよう。

 そして宇佐見先生は、糖尿病の改善にお勧めの筋トレとして、「ずぼらスクワット」を推奨している。
「基本的には、ゆっくりとしたペースで行うスクワット(ひざの屈伸運動)です。これに独自のアレンジを加えることで、筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンを効率よく使うことができるようになっています」(宇佐見先生)

★ゆっくりと筋肉を伸ばす

 ずぼらスクワットが、糖尿病の改善によい理由は2つある。1つは「大きな筋肉を集中的に鍛えられること」、そしてもう1つは「筋肉を伸ばす運動に重点を置いていること」だ。

 私たちの筋肉の約7割は、太ももやお尻、ふくらはぎといった下半身にある。「ずぼらスクワット」なら、こうした下半身の大きな筋肉を集中的に動かせるので、筋肉に貯蔵されたグリコーゲンを効率よく消費できるのだ。

 また、筋トレの動きは筋肉を縮める「短縮性運動」と筋肉を伸ばす「伸張性運動」に大別されるが、グリコーゲンの消費を促させるのは「伸張性運動」である。

 大腿四頭筋をはじめとする下半身の筋肉をじっくりと伸ばす「ずぼらスクワット」は伸張性運動なので、続けることで自然と「グリコーゲンが消費されやすい体」になっていくのだ。
「ずぼらスクワットを続けると、下半身の筋肉を強化できます。特にお年寄りの方は運動不足や食事量の不足で痩せやすく、75歳以上になると大腿四頭筋の筋肉量は40代に比べて2〜3割も減ってしまうので、筋肉痩せを防ぐためにも、ずぼらスクワットは有効です」(宇佐見先生)

 気になる「ずぼらスクワット」のやり方だが、まずは両腕をまっすぐ前に出し、両足を肩幅よりもやや広げて立つ(ガニ股でもOK)。その後、4秒ほどかけてゆっくり腰を下ろし、ももが床となるべく水平になったところで静止し、その姿勢を2秒間キープする。あとは反動をつけずに、速やかに立ち上がる。

 それぞれの動作をゆっくり行うのがポイントで、呼吸を止めていきむと血圧が急上昇したり、心拍数が速くなってしまうので、呼吸を止めないで行う。また、1回ごとに30秒ほどの休みを入れることで、筋肉にブドウ糖(血糖)を効率よく取り込めるようになる。

★週2回のペースでOK

「ずぼらスクワット」を行う回数は、10回を1セットとした3セットが目安となる。しっかりと時間をかけて、3セットを20分ぐらいで行おう。体力が衰えている人は、これより少ない回数から始めても大丈夫だ。

 また、筋トレをやると筋肉の組織に傷がつくので、「ずぼらスクワット」は毎日行う必要はない。1日やったら休みを1〜2日入れて、週2回ぐらいのペースで行うのが理想的だ。休んでいる間にたんぱく質の再合成が起こり、筋肉の傷が癒えて、より強化される。ぜひ、今日から始めてみよう。

◉健康診断の結果を再確認!「糖尿病」の数値の目安
*チェックする項目 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
*数値 6.5以上 → 糖尿病 5.9以下 → 基準値 5.5以下 → 理想値

◉大きな筋肉を、ゆっくりじっくり動かそう
(1)両腕はまっすぐ前に出して、両足は肩幅よりもやや広げて立つ
ポイント:ガニ股になってもいいので両足の間隔は広くとる。両ひざは必ず、つま先と同じ方向に向けて曲げていく。
(2)4秒ほどかけて、ゆっくり腰を下ろしていく
ポイント:腰を下ろすときに、曲げたひざが足のつま先より前に出ないよう注意する。
(3)ももが床となるべく水平になったところで止めて、2秒間体勢をキープする
ポイント:キープしたあとは、反動をつけずに速やかに立ち上がる。(1)〜(3)を計10回、ゆっくり繰り返して1セットが完了。

◉宇佐見先生の運動療法“ずぼらストレッチ”
やり方
*(1)〜(3)を10回1セットとし、1日3セットが基本。
*1セット内、1回ごとに30秒ほど休みを入れて3セットを計20分ほどかけて行う。
*週2日ほど行えば十分。1日やったら、休みを1〜2日入れるのが理想。

注意点
血圧の急上昇を防ぐため、呼吸を止めないよう意識することが大切。腰を下ろすときに「い〜ち、に〜、さ〜ん、し〜」、下ろした腰を静止するときに「い〜ち、に〜」と声を出してカウントすれば、自然と呼吸しながら行える。

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監修/宇佐見啓治先生
うさみ内科院長。福島県立医科大学卒業後、付属病院第二内科に入局。福島赤十字病院内科勤務を経て、現職。運動療法による糖尿病や肥満、高脂血症などの成人病の治療に力を入れ、その運動や効果が雑誌やテレビ等で反響を呼んでいる。

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