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やくみつるの「シネマ小言主義」 弁護士の友人ともう一度見てみたい! 『砂上の法廷』

掲載日時 2016年04月01日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年4月7日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 弁護士の友人ともう一度見てみたい! 『砂上の法廷』

 「94分間、あなたは騙され続ける」というキャッチコピー通り、実に巧みに、伏線が張り巡らされた法廷ミステリーです。
 ややもすると画面が単調になりがちな法廷シーンに、保身のために嘘ばかりを述べる検察側証人たちの回想場面が次々挟み込まれるので、主人公たる弁護士や彼に仕えるインターン女史と同じ立場から、その真偽を見抜かなければなりません。
 また舞台は法廷とはいえ、ミステリー映画。ちょっとしたセリフや、何気ないシーンなど至る所に伏線が張られているので、くれぐれも気を抜かないように。

 ただ、監督によると、映画中の回想シーンはすべて真実を描いているとのこと。「人は嘘をついている時も、頭の中では真実しか思い浮かべないから」…と。
 なるほど、当然のことなのですが、日本の2時間サスペンスドラマあたりだと、時にこの大原則を平気で破ったりします。この映画に限って、それはないというのも謎解きのヒントの一つです。
 ですから、この映画はどなたかと行くことをお勧めします。真相に気付いたか、だとすればどの段階で…。見終わった後の検証を是非。

 この女性監督は、ご本人も弁護士資格を持っていて、実際に法廷に立つ弁護士の夫のサポートをすることもあるそうです。彼女はこの映画を撮るにあたり、徹底してリアリティーにこだわり、テレビドラマにありがちな予定調和的進行を避けたらしい。米国では陪審員の歴史が長いですが、これを見ている限りでは、真実かどうかは別として、一番真実らしく感じさせてくれた側に1票を投じるという仕組みに思えます。
 被告・原告ともに、弁護士たちもそれを心得ていて、最初はわざと負け続けておいて、陪審員たちがつい「判官びいき」になった瞬間、ひっくり返すなんて作戦を考えている。つまり、裁判に勝つためには何だってやるという側面もなくはないわけです。
 日本でも、裁判員制度が導入されていますが、こういう狡猾な弁護士にコロッと騙され、本義を失うことはないのでしょうか。…と考えてしまい、これはぜひ、友人の女性弁護士と観てみたいと思いました。

 どこまでがリアルな描写なのか、日本の裁判とどう違うのか、そしてプロの弁護士なら、真実を見抜くことができたかどうかを鑑賞後に聞いてみたい。
 そう思いまして、早速、丁重なお誘いメールを長文で送ったのですが、完全スルー。他の用件には返信をしてくれるのですが…グズグズと気にしているこの頃です。

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

『砂上の法廷』
監督/コートニー・ハント
出演/キアヌ・リーブス、レニー・ゼルウィガー、ググ・ンバータ=ロー、ガブリエル・バッソ
配給/GAGA
3月25日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー。

 大物弁護士が自宅で殺害される事件が発生。弁護士のラムゼイ(キアヌ・リーブス)は容疑者として逮捕された被害者の17歳の息子マイク(ガブリエル・バッソ)の弁護を引き受けることになる。法廷では、何も語ろうとしない被告人をよそに次々と彼の有罪を裏付ける証言が飛び出すが、ラムゼイは証言の中に嘘があることに気付く。有罪確定に見えた裁判の流れが変わり始めた時、黙秘を続けていた少年が思わぬ告白を始めるが…。

画像提供元:(C)2015 WHOLE TRUTH PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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