菜乃花 2018年10月04日号

恋敵の戸籍を入手するために17時間立てこもった仮釈放男(3)

掲載日時 2016年10月31日 23時00分 [事件] / 掲載号 2016年11月3日号

 一方、田代は「人質を強要したわけではない」という証拠を作るために、淳子さんに協力させてスマホで動画を撮っていた。
 「いいか、笑顔で『灯油のカンカンの中身は水よ』と答えるんだぞ。オレは『これを指示したのはこいつでーす』と答えるから、オレに寄り添ってツーショットになって微笑むんだ」

 その動画はLINEを通じてネットに流されることになった。それは捜査をかき乱すどころか、社会全体の目まで欺くことになった。
 〈灯油のカンカンは水よ、中身は…〉
 〈中に水入れたら『バラまいとけ』と言ったのはこっちでーす。ちなみに僕はお父さんと話がしたいのと、あと知り合いに1人話をしたいのと、最終的には刑事を呼んで話がしたいだけです。以上でーす〉
 さらに第2弾として、床にしゃがみ込んだ淳子さんの前に包丁が置かれ、その包丁を手に取って淳子さんが玄関ドアへ行き、外の様子をうかがっているような動画もアップ。そんなことからネット上では「狂言ではないか?」という声が大多数を占めた。まさに田代の思うつぼだった。

 警察は人質を解放するよう説得を続け、田代が要求していた淳子さんの父親との対話、さらに淳子さんの新しい交際相手と電話で会話させることを実現。「前の事件のことで話がしたい」と言うので、当時の担当刑事もやって来たことから態度が軟化した。
 「人質を解放してもいいが、被害届を出さないようにしてほしい。その約束を守ってくれるなら、投降する」
 警察は包丁を部屋に置いて出てきた田代を現行犯逮捕した。だが、田代は事件については一切黙秘した。

 事件後、田代の動画の件が一斉に報道され、淳子さんは共犯者呼ばわりされたが、人質になった経緯を詳細に説明。捜査当局は「立てこもりが自作自演だった可能性はない」と断定し、田代を人質強要処罰法違反で起訴した。
 「淳子の新しい交際相手が怪しかったので、納得できるまで調べたかった。最初にマンションに訪ねて来た人が本当に警察官なのか疑わしく、とっさに自分の身を守るために包丁を持ったが、淳子に危害を加えるつもりはなかった。以前の取り調べで警察官に脅迫されたことがあったので、人質ではないという証拠を残すために動画を撮影した」

 田代は本当に、ただ別れ話を切り出した淳子さんに一矢報いたかっただけなのかもしれないが、そのせいでとてつもない代償を背負うことになってしまった。
 田代は「無罪」を主張しているが、この事件の真相が明らかになるのはこれからである。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

関連タグ:男と女の性犯罪実録調書

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