菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(82)

掲載日時 2015年11月28日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年12月3日号

◎快楽の1冊
『the SIX ザ・シックス』 井上夢人 集英社 1600円(本体価格)

 子供が主要人物になっている小説をいわゆる大人の読者が読むとき、客観的な気分でいるとは限らない。むしろその逆ではないか。子供時代を経ないで大人になった者は、この世のどこにもいない。当然、己の幼い頃を思い返しながら小説の中の少年少女に感情移入することになるのだ。
 本書は今年3月に刊行された連作短篇集だ。新刊ではないが、2015年に出たエンターテインメントの大きな成果として紹介したい。全6篇、すべてに特殊能力を持った少年少女が登場する。年齢はさまざまで、4歳の少女もいれば高校生の男子もいる。総じて子供と言える年代で、タイトルから分かる通り全6名である。
 小学2年生の遥香は明日起きる惨事のイメージが頭の中で湧いてきて、それを絵に描くことができる。5年生の健太は自分が窮地に陥ったとき、悲しみが高まるあまり、その窮地をもたらした相手の体を精神の力でスパッと切ってしまう。自らの手を使って傷つけるのではない。まさに精神のみを使うのである。
 このような子供たちが各6話それぞれで中心人物になる。重要なのは、彼らがその特殊能力を決して誇らしいとは思っておらず、むしろ恥ずべきものと捉えているところだ。多くの主流派とは異なる、というコンプレック意識が孤立感を生じさせる。
 さらに言うと、どの話でも彼らは視点人物にはなっていない。児童相談所の職員、ジャーナリストなど大人が彼らと接し、そのコンプレックス意識に共感し、ときに涙する。大人が視点人物なのだ。この書き方こそ本書の真骨頂なのである。特殊能力とはすなわち、子供時代に皆が持つ強烈な自意識、疎外感の象徴なのだ。冒頭に書いた通り、本書の大人たちは自身の子供時代を忘れていない。まことのコミュニケーションに感情移入は不可欠だろう。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 今回ご紹介する『スーパー・ポーズブック』(コズミック出版社/2500円+税)は写真集である。
 どんな写真集かというと、ヌードモデルが女体を美しく見せるさまざまなポーズをとり、カメラアングルも、よりソソる角度から撮影したカットばかりを収めている。裸体を描きたいという漫画家や、イラストレーターなどに役立つ“ポーズ集”として発行されているのだ。
 恋人や妻のヌードを撮ろうとしている、アマチュア写真家にも参考になる。マスターベーション用のオカズではない、実用向け写真集といえるだろう。
 監修しているのは、水彩や油彩、イラストなどの創作活動を続け、絵画教室も運営している島本耕司氏。10月に発売された最新刊は『ヌード編vol.6』と題され、傑作カットを新たに撮り下ろしたベスト版だ。人気AV女優の葵がモデルを務めている。
 掲載されているポーズは、イマドキのエロ漫画で「見たことあるな…」という印象のものも多く、おそらくプロの漫画家や、コミケなどに作品を出展しているアマチュアにまで、幅広く重宝がられているのだろう。
 『スーパー・ポーズブック』は、これまでもヌード編をはじめバラエティー編、OL編、バレエ・新体操編など、計13冊が刊行されており、需要の高いヒットシリーズとなっている。
 ネットで当たり前に女性の裸体が閲覧できるようになり、ヌード写真集は冬の時代を迎えた。そんな中、アイデア勝負の面白い刊行物だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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