菜乃花 2018年10月04日号

楽しく飲むと病気も吹き飛ぶ? 酒との賢い付き合い方

掲載日時 2018年08月11日 19時00分 [健康] / 掲載号 2018年8月16日号

 酒は飲みたいが、健康が気になる。イメージの大半は、少量なら体によいが飲みすぎはよくないというもの。結局は適量が1番という月並みな話ばかりである。
 全国14万420人を対象とした多目的コホート研究でも、飲酒と病気の関係は明らかになっている。飲酒量が増えると、脳卒中も糖尿病も増える。ただし、虚血性心疾患は、飲酒量が多いほど、飲まない人よりもリスクが下がるというのだ。
 「それは朗報!」と喜ぶ方もいるだろう。しかし、がんの場合、飲酒量が増えるほど、かかるリスクは高まる。
 国際的にも口腔、喉頭、食道、乳房のがんの発症リスクになると見られており、この傾向は日本人も例外ではない。大腸がんのリスクも確実に上げると言われているが、これらは日本人の平均で、遺伝的に酒に強い体質と弱い体質がある。

 酒に強いかどうかは、アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の影響が大きい。ALDHの1つのALDH2の活性は遺伝的要素によって決まり、次の3つに分けられる。
 (1)活性型…酒に強い。
 (2)不活性型…酒に少し強い。活性型に比べると弱いが、経験を積むとたくさん飲めるようになる。
 (3)失活性型…全然飲めない。

 遺伝的に酒に強い体質かどうかによって、病気のリスクは変わってくる。よく知られているのは咽頭がんや食道がんについてで、不活性型の人は飲酒量が増えるとこれらのがんになる率が高くなる傾向がある。
 また、飲酒によって胃液中で発生したアセトアルデヒドが胃がんのリスクを高める。不活性型の人はALDH2が働かず、胃のアセトアルデヒドの濃度が上昇するため、胃がんのリスクがもっと高くなるという。

 一方、痛風について、防衛医科大学の研究チームが、活性型の人は不活性型の人に比べ、痛風の発症リスクが2.3倍高くなることを突き止めている。
 本誌『専門医に聞け!』でおなじみの牧典彦・ほほえみクリニック(大阪府枚方市)院長は、過去に痛風で苦しんだ経験をこう語っている。
 「ぼくの場合、遺伝的に酒が飲める体質なので、痛風は宿命ですね。痛みに耐えかねて1年半禁酒しました。毎日ジョギングに励み、体質が改善した後、梅酒から飲み始めた。今ではかなり酒を飲むようになりましたが、痛風発作も起こらず、肝機能も正常に保たれています」

 さらに、酒飲みに嬉しい情報を紹介しよう。
 倉知美幸・NTT西日本東海病院総合健診センタ長は、『酒飲みは酒をやめるとかえって早死にする』(主婦の友社)という著書の中で、酒が病気によい作用をしたと考えられる例や、酒をやめたために早死にしたと考えられる例を紹介している。

 胃がんが発見されたときには末期で、手術で切除できなかった57歳の女性の場合、その時点で余命3カ月との診断だった。彼女は朝から飲むほどの酒好きだった。
 倉知医師は、胃がんは飲酒が原因ではないと思っていたので、禁酒するようには言わなかったという。実際、退院後に結構飲んでいたようだった。
 転移もなく5年がすぎた頃、本人が「これを機にお酒をやめる」と宣言した。倉知医師は「無理にやめなくていいですよ」と言ったという。ところが、3カ月たった頃、急に具合が悪くなり、肝臓に転移が発見されて、あっという間に食事が摂れないほどに衰弱し亡くなってしまった。
 この大どんでん返しの結末について、倉知医師は、「医学的にははっきり証明できませんが、私は、お酒をやめたことで長年の免疫の均衡が崩れ、がん細胞の急激な増殖につながったのではないかと思っています」との見方を示している。

 大腸がんで手術した57歳の男性の場合は、酒が好きで、手術後に動けるようになったら、病室を抜け出して飲むほどだった。13年たった今も、元気に飲み続けているという。
 がんが再発せず、元気でいることについて倉知医師は、こう説明している。
 「『お酒を飲むと体に悪いんじゃないか』という後ろめたい気持ちはこれっぽっちもなく、『お酒が好きだから』『美味しいから』と好意的にとらえて飲んでいることで、ストレスがない分、免疫力が向上して、がんの再発を防いでいるのではないかと考えられます」

 一方、酒を飲んだことを否定的に捉えたため、突発性難聴によるめまいが長引いた女性の例も紹介している。飲酒を肯定的に捉えるか否定的に捉えるかによって、体にもたらす影響は随分と違うようである。
 なお、断っておくが、倉知医師は誰に対しても酒を飲むように勧めているわけではない。

 とはいえ、酒の量を減らしたいと節酒に挑む人は少なくないだろう。意志の力で酒の量は減らせるのか。
 英国で飲酒量が標準を上回るレベルから、アルコール依存症の疑いがあるレベルまでの飲酒者2928人を対象に行った調査がある。その報告によると、酒量を減らしたいと思い実際に減酒を試みた人は、半年後の調査では飲酒量はむしろ増えていたのだ。
 「飲酒を再開してから、休肝日を作ったこともあります。しかし、解禁日に飲みすぎてしまい、翌日に調子が悪くなったことがあります。酒飲みは休肝日を作らず、毎日同じ量を飲み続けるのがよいと思います」(前出・牧院長)

 岡田正彦・新潟大学名誉教授によると、休肝日にエビデンス(医学的根拠)はないとのこと。
 「週に1日だけお酒を飲まなかったとしても、普段、大酒を飲んでいる人の肝臓が休まるわけではない。肝臓は日々、さまざまな悪玉物質の解毒を行うところですから、そもそも休むことのない臓器なのです。肝臓を守るうえで大切なのは、飲みすぎないことしかありません」

 それにつけても、酒飲みは酒を飲み続けるべきか、それとも酒量を減らすべきか、悩ましいところである。
 ただし、年をとるにつれて量がどんどん増えていく人は少なくない。しかし、前述のように、無理に酒量を減らそうとするとかえって増える。いったい、どうすればいいのか。
 「減(節)酒外来を利用するのも1つの方法です。従来からある禁酒外来では、禁酒に重点が置かれてきましたが、減酒外来は『お酒をやめたくないが、節度を持って飲みたい』と思っている人たちの要望に応えるものとして開設されました」(前出・牧院長)

 牧院長は去年、佐賀県にある国立病院機構肥前精神医療センターの節酒プログラムに参加した。詳しい内容はご紹介できないが、自分の飲酒量と依存度を自覚し、飲酒(節酒)の目標を具体的に立てているという。
 「このプログラムに参加した結果、目標を明確にすることで少し減酒することができました」(同)

 酒を楽しく飲めているうちが花。飲むからには楽しく飲みたいものである。

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