葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(100)

掲載日時 2016年04月08日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年4月14日号

◎快楽の1冊
『ホラベンチャー!』 竹内真 双葉社 1600円(本体価格)

 多くの人が大学、高校、あるいは中学といった学校を卒業したあとは、何らかの会社に就職する。社会人になるというのはすなわち、ただ学ぶだけの時期を終え、自分で稼ぐ日々を過ごすようになる、ということだ。社会のシステムについてさほど知らない若者が、まずは会社に入り、システムの荒波を体験し始める。これがおおむねの順当な道であろう。
 しかし、しばらく働くうちに、社長の経営理念や上司の一方的な命令に我慢ができなくなることも出てくる。それでも我慢して勤めを続けるのか、あるいは退社して自ら会社を興したくなるのか、選択は大きく二つ、である。誰しもがプライドを持っており、ただこき使われることに嫌気がさすのは当然のことなのだ。
 本書の主人公・洞山真作は30歳。食品系商社の理不尽と思われる人員削減に反発し、早期退職の道を選んだ。別の会社に就職しても、同じような苦渋を味わうかもしれない。友人の誘いを受け、ベンチャーの起業を目指す者たちが集まるセミナーに参加するようになる。
 作者は1971年生まれで、過去に小説現代新人賞、小説すばる新人賞など、複数の賞を獲得している才人だ。真作はセミナー参加のあと、SNSの立ち上げに参加し、新たなセミナー開催も行う。人生が軌道に乗り始めたと思ったら、思わぬ挫折、しかし、地方の町おこしにつながる新事業にかかわるようになり…と、一サラリーマンだった青年が奮闘するビジネス・エンターテインメント・ストーリーが展開されるのだ。
 物語の最初のあたり、真作はセミナーで知り合った、同じく起業を目指す人たちと仕事についての議論を重ね、しだいに営業、商取引と活躍を広げていく。前述のように会社を辞めたい社会人は珍しくないが、退社後にどう生きるのか、積極的な指針をくれる小説だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 読み始めるとすぐに第1章「男のセックスライフに終わりはない!」との文字が目に飛び込んできた。そんな頼もしい内容の書籍が『60歳からの欲情』(KADOKAWA/1300円+税)だ。
 著者は生活経済評論家の川北義則氏。同書をひも解くと、「プロの女と上手に遊ぶ方法」「不倫の中にも倫理がある」「ラブホテルは密集地帯にかぎる」と、ユーモアたっぷりに男の愉悦を説いている。
 元東京スポーツの記者というだけあって、十二分に遊び心をくすぐる内容だ。
 いわばシニア層への遊びの指南書。もっと遊べ、もっと女を抱け、もっとイヤらしくなれと声高に勧めてくれる、何とも力強い1冊なのである。
 高齢化社会にあって、中高年男性向けセックスマニュアルの出版物は数多い。そのほとんどは、医療現場からの提案本だ。カラダを健康に保つことが、老後の性生活につながるという内容である。
 むろん、健康は大切。だが、まずは気持ちを奮いたたせ、貪欲に遊ぼうというのが本書の骨子である。老いを防止するための心の在り方として、ガツガツとセックスを求めようというワケだ。世の男たちへのエールと、とらえていいだろう。
 そして、最後は「腹上死には気をつけよ」と結んでいるのだが、読み終えると、腹上死も男の本懐かもしれないとさえ、思えてしまうのだ。
 遊びまくって逝く…それこそ、オスに生まれた者の本能ではないだろうか。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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