菜乃花 2018年10月04日号

気管支炎・心臓疾患・不整脈へと続く… 重症化を避ける花粉症対策

掲載日時 2018年03月10日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年3月15日号

気管支炎・心臓疾患・不整脈へと続く… 重症化を避ける花粉症対策

 花粉シーズンが到来した。気象庁によれば、今年は全国各地で大雪が降ったために飛散の開始が遅れていたが、東京では平年より12日遅い2月16日にシーズンに突入した。今後の全国の気温は平年並みか高めと見られ、飛散量は昨シーズンを上回ると見られている。
 都内の総合医療クリニック院長、久富茂樹氏の元には、2月中旬あたりから花粉症患者の数が日ごとに増えているという。
 「例年では、花粉症の人の約35%の人が気管支に症状が出るとのデータがあり、呼吸がしづらいと訴える患者さんも多くを占めます。また、気管支のほか、花粉症の様々な症状が心臓にも悪影響を与えることも明らかになっている。アレルギー反応によって副交感神経が異常亢進し、目、鼻の粘膜から涙、鼻汁、痰などが異常に分泌されます。こうした症状によって呼吸が困難になると、心臓への負担が増えるのです」

 人は、鼻や口から空気を吸うことで、血液が肺の中の酸素を取り入れ、動脈を通り全身に酸素を運ぶ。そして体内で酸素が使われると、今度は二酸化炭素をためて静脈を通って心臓に戻り、さらに肺に流される。
 一方の肺では、二酸化炭素と酸素を交換し、再び動脈を通して全身に酸素を供給する。しかし、肺が十分な酸素を血液に供給できなくなると、心臓から肺に流れる血流が制限される。心臓は肺に血液を送るために、より大きな力が必要になり、負担も増え、不整脈などの病気も出やすくなるのだ。
 「厄介なのは、呼吸だけではなく、花粉症によって免疫力や抵抗力が低下したり、症状によってストレスを感じていると、自律神経のバランスが崩れやすくなることです。交感神経と副交感神経が互いにバランスをとってこそ呼吸器、循環器などを正常な形でコントロールできていられるのです」(同)

 同じ花粉症でも、呼吸器に起きる症状は、鼻や目、皮膚と発症のメカニズムが異なるという。鼻や目は、花粉が粘膜や表皮に取りつくことで炎症が起きるが、呼吸器の場合は、直接、花粉が到達することはまれ。鼻の粘膜に花粉が留まるからで、気管支に直接到達することはまず考えにくいからだ。
 では、なぜ気管支などの呼吸器で症状が起きてしまうのか。
 この点を、耳鼻咽喉科医の笠井啓之医師は、こう説明する。
 「最初は、鼻で炎症が起きるんです。花粉症によるアレルギー性鼻炎で炎症細胞が活発化されると、その一部が血流に乗って気管支に移り、気管支炎を起こす。しかし、花粉症は鼻に出る症状と思い込んでいる人が多く、つい耳鼻咽喉科を受診してしまい、呼吸器科を訪れる人は少ない。結果、気管支炎を悪化させ、せき喘息や気管支喘息などに進んでしまう人が多いと思われます」

 ただし、もう一つ注意したい症状に、「後鼻漏」があるという。
 「これは鼻炎の症状の一つで、鼻水が鼻の奥を伝わって喉に垂れる症状。さらに気道に流れ込んでしまうと、それを排出しようとして咳が出る。比較的軽い咳が特徴ですが、これも悪化すると、せき喘息や気管支喘息増幅の原因となるのです。耳鼻咽喉科で花粉症の治療をして、鼻の症状がなくなった後も長く咳が続くような人は、我慢をせずに呼吸器科を受診して下さい」(同)

 また、前述のように、花粉症は呼吸だけでなく免疫力や抵抗力を低下させ、循環器のコントロールをも難しくする。そうなると、生体リズムが乱れたり、ストレスがかかって自律神経のバランスが崩れてしまう興奮状態が続き、心臓にかかる負担が大きくなる。
 「ここで問題となるのが、花粉症の治療で使われる薬が心臓疾患にとっては大敵である点です。花粉症の薬の多くには、交感神経を刺激する成分が含まれ、交感神経を刺激して鼻の毛細血管を収縮させて鼻汁の分泌や充血を抑える。常用すると鼻の毛細血管のみならず、全身の血管も収縮させるために、結果として血圧の上昇を招くのです。花粉症の薬の多くが、心臓病や高血圧の患者さんには使用できないとしているのは、そのためです」(同)

 東邦大学医療センター大橋病院呼吸器内科の担当医も、こう言う。
 「花粉症で処方される薬の中で、抗ヒスタミン薬にも注意が必要です。鼻汁やくしゃみなどのアレルギー症状の原因となるヒスタミンに作用し、症状を抑える薬なのですが、他の薬との飲み合わせによる相互作用から、重度の不整脈で死亡する事例が起こっているのです」

 現在は、副作用の少ないとされる抗ヒスタミン薬が販売されているというが、不整脈の副作用報告はゼロではないという。
 「やはり、特に心臓疾患を抱えている人は注意しなければいけません。また、抗ヒスタミン薬は唾液を少なくする副作用もあり、その結果、口臭が強くなります。鼻水が口中にたまり、細菌が発生して副鼻腔炎などを誘発することもあります」(同)

 花粉症になった場合、もう一つリスクがある。睡眠時無呼吸症候群(SAS)に陥りやすいことだ。
 「夜、寝ている間に何度も呼吸が止まる病気で、低酸素状態を繰り返したり、交感神経を活性化させることなどによって、心臓、脳、血管に大きな負担がかかります。そのため、花粉症では、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞といった重大な合併症や高血圧、心房細動が起こりやすくなるのです」(専門医)

 このように、花粉症は単なるくしゃみやせき、喘息などだけではなく、様々な病を招くのだ。
 海外の研究でも、「花粉症シーズンは心臓疾患の発作を起こすリスクが上昇する」という報告がある。
 「花粉が飛散するシーズンは、心臓発作による緊急処置の件数が平均5%上昇し、中でも花粉飛散レベルがピークとなる5月は16%、6月は10%増加したといいます。詳細な内容についてはさらなる調査が待たれますが、花粉症が心臓疾患に悪影響を及ぼしている可能性は高いとはいえ、薬の処方の内容や飲み合わせなども、十分に考える必要があります。症状が重くならないうちに専門医の診断を受けることが肝要です」(同)

 辛い季節、面倒がらずに対処しよう。

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