園都 2018年6月28日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第247回 続・財務省が日本を滅ぼす

掲載日時 2017年11月23日 14時00分 [政治] / 掲載号 2017年11月30日号

 10月30日に小学館から刊行した『財務省が日本を滅ぼす』に、
 《2018年度は、診療報酬と介護報酬が同時に改定される、6年に一度の年となる。
 財務省は、もちろん診療・介護報酬の「同時引き下げ」を目論んでいる。高齢化の進展で、本来は毎年1.2兆円ずつ「増加しなければならない」社会保障支出について、財務省は2016年度から'18年度の三年間の伸びを、1.5兆円に抑制しようとしているのだ。》
 と、書いたわけだが、やはりやってきた。
 10月25日の財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)において、財務省は医療及び介護サービスの公定価格を見直す報酬改定で、いずれも減額を要求してきたのである。すなわち、診療報酬と介護報酬の同時削減だ。

 財務省が診療報酬や介護報酬の減額を求める理由は、以下になる。
 「診療報酬:デフレの影響で賃金や物価水準が上昇しない中、医師ら人件費にあたる診療報酬の本体部分は増えた」
 1997年の橋本緊縮財政で、日本経済はデフレ化。国民の実質賃金はピーク('97年)と比較し、15%も減ってしまった。デフレで他の産業の賃金水準が上がっていない時期も、診療報酬の本体部分は増え続けた。
 だから、削減。すなわち、医師や介護士に「貧乏になれ」という話だ。

 「介護報酬:'15年度の改定時に、基本報酬4.48%削減という大幅なマイナス改訂をしたが、さらに削減が必要。介護サービス全体の利益率は、中小企業の平均よりも高く、おおむね良好な経営状況である」
 需要が拡大しないデフレ下で、中小企業の利益率は落ちていき、赤字企業が増えてきた。介護産業は、'15年度の介護報酬減額で利益が一気に落ち込んだとはいえ、まだ「プラス」である。だから、さらなる減額、というわけだ。

 現在、医療サービスの現場は猛烈な人手不足に襲われている。何しろ、医師の有効求人倍率は、5倍を超えているのだ。
 しかも、地方の医療機関の医師や看護師は、途轍もないサービス残業を強いられ、何とか現場を回している有様だ。まともに残業代をもらうと、病院が倒産してしまうため、医師や介護士たちは懸命に耐えている。
 その状況で、財務省は、
 「デフレで他の産業の賃金は下がったが、医療は下がっていない」
 という、恐るべき理由で診療報酬の本体部分の削減に乗り出そうとしているのだ。そもそも、日本をデフレに叩き込んだのは、緊縮財政路線を強行しようとする財務省であるにも関わらず。
 まさに、「医療亡国」としか言いようがない。

 このままでは、我が国はおカネを払っても医療サービスを受けられなくなる。医療の供給能力が縮小していく以上、当然だ。
 あるいは、日本は、
 「お金持ちは医療を受けて助かるが、おカネがない人は医療を受けられない」
 という、アメリカ型の社会に変貌を遂げることになるだろう。

 そして、介護サービス。
 介護の有効求人倍率は3倍を超え、産業としては医療や運送、土木・建設を上回り、日本で最も人手不足が深刻化している。理由は、給料が安すぎるためだ。
 介護の平均給与は、産業平均と比較し、女性が月額▲3万円、男性が月額▲10万円と、悲惨な状況に置かれている。その状況で、財務省は「利益率が高い」などと言いがかりをつけ、介護報酬を削ろうとしているのだ。

 厚生労働省が10月26日、介護産業の利益率が激減している事実を示すレポート「経営実態調査」を発表した。同レポートによると、2016年度の介護関連企業の利益率にあたる収支差率は、全介護サービスで3.3%。介護報酬減額('15年)前の2014年度の7.8%から、大きく落ち込んでいる。
 この状況で、さらなる介護報酬削減に踏み切ると、どうなるか。
 高齢化で需要が増え続ける中、介護報酬が削減され、今度こそ介護業界は「赤字が常態化」する事態になる。そうなると、事業を継続する意味がなくなるため、日本は介護の供給能力が激減し、高齢者が介護サービスを受けられなくなる形の「介護亡国」に至る。
 介護業界の人件費はさらに下がり、日本人が職に就かなくなり、11月1日に技能実習制度が介護分野にも解禁されたことを受け、我が国は「介護? ああ、外国人がやる仕事か」と、国民の多くが考えるようになってしまい、移民国家へと全速力で走っていくことになるだろう。

 財務省の緊縮財政路線は、診療報酬・介護報酬の同時減額にとどまらない。
 '17年10月の総選挙において、安倍総理大臣や自民党は、
 「消費税の使い道を拡大し、(国民を貧困化させる)負債の返済ではなく、教育無償化対策などに2兆円を充てる」
 と、公約していた。とはいえ、もはやそれすらも実現不可能なようだ。
 教育無償化対策の財源が3000億円分足りないとして、企業が出す社会保険料を増やして穴埋めする方向で調整が始まったのだ。

 唖然とした。
 3000億円の財源が不足するから、社会保険料の負担増を求めるなど、明確な公約違反である。財源が足りないというのであれば、単に消費税の増収分から、政府の負債返済分を減らせば済む話だ。
 というよりも、教育のために社会保険料で負担するとは、財務省が小泉進次郎議員などを使い、推していた「こども保険」の考え方そのものだ。結局、安倍政権は財務省に膝を屈したわけである。

 さらに、財務省は2018年度税制改正において、たばこ増税を検討しているという報道が流れた。さらにさらに、観光振興財源というお題目で、出国税の検討も進んでいる。
 そして、極めつけといってもいいが、政府の税制調査会は会社員などの所得税を計算する際に、一定額を経費としてみなす「給与所得控除」の廃止も俎上に上っているのである(これは大きな話だ)。
 次々に、まさに次々に、増税(緊縮財政)政策が推進される。緊縮財政を継続する限り、我が国のデフレは終わらない。筆者は今、まさに「財務省が日本を滅ぼす」光景を目撃している気分だ。財務省の緊縮路線に歯止めをかけなければ、我が国に繁栄の未来は決して訪れない。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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