菜乃花 2018年10月04日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 いいのか? メキシコ人 この描かれ方で! 『ボーダーライン』

掲載日時 2016年04月18日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年4月21日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 いいのか? メキシコ人 この描かれ方で! 『ボーダーライン』

 見終わってまず思ったのは、トランプ大統領候補が見たら、喜びそうな映画だなということ。まさに「アメリカ人が考える歪んだ“メキシコ像”」が描かれています。
 パンフレットによると、この映画の脚本家はここ10年間立ち入り禁止になっているメキシコ北部に迫ってみたかったそうで、その地域は「麻薬や腐敗が蔓延した無法地帯」だとか。
 しかし、この映画だけ見るとメキシコという国全体がヤバそうに思えて、トランプ氏の提唱する不法移民阻止の「国境の壁」のプロモーションに使えそうです。
 大統領選が始まると、決まってそっくりさんのピン芸人が出てきますが、この配給会社は早速そんな人物を探し出し、「この映画、痛快だぜ!」とか言わせたら、さぞや受けるんじゃないかと思います。

 映画自体は、巨悪化するメキシコ麻薬カルテルを撲滅する特別部隊の特殊任務が非常に抑制的に描かれていて、よくある派手なドンパチが展開するわけではありません。
 また、相手が麻薬組織とはいえ、あまりにあっさりと始末していく部隊に、違和感を覚えて抵抗する女性捜査官が主人公。彼女が「アメリカの良心」として物語の中心に存在しています。
 とはいえ、「アメリカ対テロ組織」、「アメリカ対麻薬組織」という構図は、アメリカ映画のド定番として継承されていて、「現代版西部劇」なんだなと…。
 近年、世界の警察としての存在感は薄れているアメリカですが、この映画が「最高傑作」として称され、お客さんたちはキャッキャ言ってるのでしょう。

 私はこれまで二度メキシコを訪れていますが、非常にのどかだったし、人はフレンドリー。正直、いい思い出しかありません。
 2015年度の世界の幸福度ランキングでも、メキシコは14位で、15位のアメリカより上。この映画の描かれ方はずいぶんじゃないかと、中南米好きとしては、憤懣やるかたない。
 次にメキシコに行く機会があったら、この映画に出てくる「フアレス」という街に行きたい。“見てやろう癖”がウズきます。外務省の注意勧告が出ているほど、治安は悪化しているようですが…。

 “見てやろう癖”と言えば、近々、チェルノブイリに行く予定です。もちろん除染された場所に限ってですが、年々“見てやろう”の気持ちが強くなるばかりです。
 もちろん、目的は反原発などではなく、純粋に“観光”です。でも、はしゃいだ気分で行くわけじゃないですよ。実際にこの目で見てみたい、それだけです。

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

ボーダーライン
監督/ドゥニ・ビルヌーブ
出演/エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ビクター・ガーバー、ジョン・バーンサル
配給/KADOKAWA
4月9日(土)、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー。

 巨悪化するメキシコ麻薬カルテルを撲滅すべく、アメリカ国防総省の特別部隊にリクルートされたFBI捜査官ケイト(エミリー・ブラント)。特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)のもとで極秘任務に就いた彼女は、謎のコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)と共に、国境付近を拠点とする麻薬組織・ソノラカルテルを撲滅させるミッションを任される。しかし、人が簡単に命を落とす現場に直面したケイトは、善と悪の境界が揺らぎ始めていく…。

画像提供元:(C)2015 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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