彩川ひなの 2018年7月5日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第243回 移民制限に舵を切る欧州

掲載日時 2017年10月26日 10時00分 [政治] / 掲載号 2017年11月2日号

 9月24日に投開票されたドイツ連邦議会(下院)選挙において、右派の「ドイツのための選択肢(以下、AfD)」が第三党に躍進、94議席を獲得した。逆に、メルケル首相率いる与党のキリスト教民主・社会同盟は、大きく議席を減らすことになった。
 AfDについて、いまだに「極右」呼ばわりするマスコミが少なくないが、同党の移民政策は別に過激でも何でもない。AfDは、確かに反イスラム色は強いものの、移民問題については、
 「ドイツの民主主義的発展に必要な専門的な能力を持つ外国人は移民として受け入れる」
 「外国人の犯罪者を強制送還する条件の緩和」
 「重犯罪を犯した帰化外国人から国籍剥奪」
 「難民の受け入れ数に上限を設ける」
 「ドイツに家族を呼び寄せることを禁止する」
 「難民要件が消滅した難民は、母国に送還」
 など、普通の政策を掲げている。別に、AfDは「移民排斥」を謳っているわけではないのだ。単に「節度ある移民受入を」主張しているにすぎない。

 さて、AfDの躍進を受け、ドイツのメルケル政権は難民らの年間受け入れ人数を20万人以下に抑制する方針を固めたと報じられている。2015年に、メルケル首相が、
 「政治難民の受け入れに、上限はない」
 などと大ミエを切り、難民はもちろん、経済移民まで大々的に受け入れたドイツだが、大きな曲がり角を迎えたことになる。

 '17年の6月、ドイツ当局は難民(偽装難民の移民含む)の75%が長期失業と生活保護になることを認めた。ドイツ連邦政府のアイダン・オズワズ移民難民統合長官は、今後の5年間を見ても、移民・難民の4分の1から3分の1しか労働市場に参入しないと指摘。すなわち、7割から8割の難民・移民は、ドイツ国民の税金にぶら下がって生きていくことになる。
 連邦労働省の統計によれば、難民の就業率はわずか17%にすぎない。ドイツ連邦雇用庁の最新統計によると、ドイツ国内にいる200万人(!)の外国人が、失業保険を受け取っているとのことである。人手不足に悩むドイツは、難民・移民を「労働力」として当初は歓迎した。とはいえ、現実には難民・移民は労働力にはならず、失業手当や生活保護にただ乗りするフリーライダーと化してしまった。しかも「数百万人」という規模である。

 10月15日、オーストリア国民議会(下院)選挙が行われる。本稿をお読みいただいている頃には結果が判明しているだろうが、AfDと同じく「移民制限」を主張する自由党が躍進しているはずだ。自由党の支持率は、本校執筆時点で25%と、多文化主義を訴える与党の社会民主党と2位争いをしている。支持率1位の国民党は、弱冠31歳のクルツ外相が率いている。クルツ外相は地中海を渡り、欧州に流入する移民について、
 「彼らは難民資格を失っている」
 として、欧州の水際で難民・移民を食い止め、強制送還するべきと発言するなど、移民に対する厳しい姿勢が人気を呼んでいる。

 オーストリアで反移民の政治家や政党の支持率が上がっているのは、やはり「フリーライド」の問題が洒落にならない状況であるためだ。9月16日のブライトバート・ニュース・ネットワーク誌は、オーストリアの難民申請者のうち90%が社会保障に依存していると報じている。オーストリアの内務大臣は、
 「オーストリアは2014年から2017年にかけた負荷に圧倒されている」
 と述べ、「国境防衛」の重要性について語った。

 というわけで、オーストリアでは国民党と自民党が連立政権を組む可能性が高まっている。実は、両党は以前も連立を組んだことがあるのだ。両党が連立政権を組むと、オーストリアは「移民制限」が間違いなく強化される。特に、すでに軍隊が派遣されているオーストリアのイタリア国境は、難民・移民にとっての「壁」が高くなっていくことだろう。

 また、ハンガリーでは、右派勢力の「より良いハンガリーのための運動(ヨッビク)」が支持を高め、与党の政策にかなり影響を与えている。ハンガリーのオルバン政権が移民に対し強硬姿勢に出ざるを得ないのは、ヨッビクの影響が大きい。
 ハンガリーのオルバン首相は、今年の2月末に、
 「民族が混ざりすぎると問題が起こる」
 と発言し、移民流入に強硬に反対する姿勢を見せた。

 そして、AfDの躍進を受けたドイツですら、難民の流入制限に舵を切ろうとしているのが、現在の欧州なのである。
 ドイツでは、難民・移民のフリーライドに加えて、外国人犯罪も問題になっている。そもそも、'14年以降にドイツに流入した移民、難民のほとんどが若い成年男子なのだ。100万人を超える若い男性の難民、移民が仕事もせず、生活保護にぶら下がって「暇な時間」をすごしているのだ。犯罪が増えないと思う方がおかしい。
 '16年のドイツでは、外国人による犯罪件数が29万件を越えた。外国人犯罪の激増を受け、ドイツ全体の犯罪件数が+0.7%になってしまったとのことである(外国人犯罪を除くと微減)。ドイツをはじめとする欧州の例を見てなお、いまだに日本国内において「外国人労働者を」「移民受入を」と主張する人が少なくないわけだから、あきれ果ててしまう。

 ドイツの問題が悲惨なのは、解決策がないことだ。今さら数百万の移民、難民を祖国に送還することなど不可能である。ドイツ国民はこのまま未来永劫、外国人の社会保障へのフリーライドや、外国人犯罪、テロ等に苦しめられることになる。やがては「ドイツ国民のドイツ国家」も失われる。ドイツの問題は、すでに手遅れだ。
 手遅れになるのが嫌ならば、日本はこれ以上、移民を受け入れてはならない。もちろん、日本は人手不足であり、かつ人手不足が深刻化していくことは明らかだ。少子高齢化で生産年齢人口比率が低下している以上、当然である。
 とはいえ、人手不足は外国人労働者受入ではなく、生産性向上のための投資で解消するべきだ。これが、資本主義の鉄則である。この鉄則を思い出さない限り、わが国もまた、ドイツの後を追い、次第に「移民国家」化していくことになるだろう。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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