RaMu 2018年12月27日号

【話題の1冊】 著者インタビュー 廣末登 ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。―極道歴30年中本サンのカタギ修行奮闘記―新潮社 1,300円(本体価格)

掲載日時 2018年12月06日 15時30分 [エンタメ] / 掲載号 2018年12月13日号

元暴力団幹部が_表社会での「今」を伝える

 福岡県北九州市に本拠を置く指定暴力団・工藤會で専務理事を務め、数年前に脱退した中本隆氏の「過去と現在の生きざま」を追う。極道業界がいかに厳格な世界だったのかが伝わるが、コミカルなエピソードも掲載。一方、中本氏が“表社会”で直面した問題や、小倉でうどん店を営む中での奮闘ぶりにも密着。組織から足を洗った元渡世人の「今」を伝える唯一無二のノンフィクションだ。

――元ヤクザが一般社会で生きていくのは、そこまで難しいものなのですか?
廣末 暴力団排除条項に“元暴5年条項”というものがあり、暴力団を辞めても5年間は組員と見なされて、現役同様に社会的権利が制約されます。銀行口座も作れないため、働きたくてもなかなか職が見つからず、再びアウトローの世界に戻ってしまう例が非常に多いのです。
 本書ではうどん店という自営業で成功した事例を記しており、過去に執筆した拙著『ヤクザと介護 暴力団離脱者たちの研究』(角川新書刊)では、サラリーマンとしての成功事例を取り上げました。両者のスタイルは違いますが、暴排の動きが進む現代社会では貴重な例といえます。

――福岡県警は工藤會に対して厳しい取り締まりを展開しており、すでに脱退したとはいえ、中本氏への世間の風当たりも強かったのではないでしょうか?
廣末 「死ぬ気でカタギになる」という気合いがあり、何より中本さんは我慢強かったですね。開店当初は、1日5〜6杯しか売れないときもあったそうですが、くじけず、諦めずに努力した。うどんの味も試行錯誤し、小倉っ子に「受け入れられる味」を追求し続けたことが、今の繁盛店につながったんだと思います。

――中本氏が「うどんの味」以外に努力したことは?
廣末 どんなに冷たい目で見られようが、積極的に地域に溶け込もうとしたことです。次第に商店街の店主や街の人たちも警戒を解いていき、生き方も理解してくれた。中本さんは銀行口座を持てませんから、売上金を手提げに入れて持ち運び、素材の仕入れも現金取引です。雑居ビルで商いをしているにもかかわらず、火災保険にも入れません。
 こうした逆風にも負けず、日々、お客さんに「ありがとうございます」と笑顔で言えるのは、中本さんの過去を受け入れてくれた京町商店街の人たち、小倉っ子の人情があったからではないでしょうか。
 この成功事例を社会で共有し、ヤクザを辞めた人、辞めようと思っている人の「明日への希望の1冊」となれば、これほどうれしいことはありません。

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廣末登(ひろすえ・のぼる)
1970年、福岡市生まれ。北九州市立大学社会システム研究科博士後期課程修了。博士(学術)。福岡県更生保護就労支援事業所長、大学非常勤講師も務める。著書に『ヤクザになる理由』(新潮新書刊)などがある。

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