葉加瀬マイ 2018年11月29日号

国民の5人に1人が不眠症? 危うい睡眠不足の解消法

掲載日時 2018年05月21日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年5月24日号

 厚生労働省の2017年国民健康・栄養調査によれば、5人に1人が不眠症とされ、その割合は年々増え続けているという。
 睡眠不足は記憶力、学習能力の低下など、様々な弊害をもたらす。
 「起きている際、脳には五感を通して様々な情報がインプットされます。一方で睡眠中は、その情報を整理して大切なことを記憶にとどめ、不必要な情報は消去する作業を行っている。睡眠不足になると、その作業が滞り、脳の機能を修復することもままならず、仕事のパフォーマンスも落ちやすくなると言われています」(健康ライター)

 ご存知の方も多いと思うが、睡眠時には、脳が休まるノンレム睡眠と、体が休まるレム睡眠が交互に訪れる。ノンレム睡眠中に疲れた脳は修復され、レム睡眠中に情報整理を行うのだ。睡眠不足では、このどちらも不十分になることから、当然、脳にとって良好な状態ではない。
 たとえば職場で、「明日、午前中の企画会議までに新しい提案を考えて出してくれ」と言われ、前夜遅くまで知恵を絞ったとする。しかし、懸命に取り組み“これはいける!”と思ったものの、いざ翌日の会議になると上手く提案できずに、徒労に終わることがある。ところが、同じような状況で「明日の朝早く起きて考えよう」と布団に入り、いつもより早めに目覚めて思わぬ発想がひらめき、すんなり提案が通るようなこともある。
 「それは、単なる偶然では片づけられない面があります。つまり、睡眠によって脳の情報が整理されるかどうかに左右されるということ。よく、浮かんだアイデアは一晩寝かせた方がいいと言われますが、こうしたことも脳の仕組みにかかわっています。夜10時から0時までの3時間よりも、朝5時から8時の方が記憶力や学習能力が上がることも分かっている。ぜひ睡眠時間を確保して、効率のいい生活を送ってみてください」(睡眠専門医)

 睡眠不足は、もう一つの医学面から見てみると、心臓疾患の発症率上昇や、冠動脈性心疾患で死亡するなど、軽視できないものがある。
 厚生労働白書によると、1日の睡眠時間が6時間未満の場合、狭心症や心筋梗塞の有病率(ある地域の人口1000人当たりに対する有病者の比率)がアップするという。また、5時間以下では心臓疾患の発症率が上昇、4時間以下になると冠動脈性心疾患による死亡率が上がることも分かっている。
 「私の経験でも、心臓の手術を受けるような患者さんは、夜型の生活をしている人が多い印象を受けます。若い世代だけでなく、高齢者においても同様の傾向が見られるので、やはり起きている時間が長い“交感神経型”の人が、心臓のトラブルを招きやすいと思われます」

 東京都立多摩総合医療センターの心臓外科担当医はこう言う。
 「米ハーバード大でも、睡眠時間が5時間以下の人は、8時間以上の人よりも心臓病リスクが1.45倍高いという研究結果が出ている。また、米国で行われた他の研究でも、心臓病の発症リスクが上昇することが分かっています。睡眠不足が心臓にダメージを与える理由はいくつも考えられますが、中でも大きな要因となるのが、自律神経のバランスが崩れてしまうことなのです」

 自律神経は交感神経と副交感神経のバランスで成り立っている。睡眠中は交感神経の活動が低下し、副交感神経の活動が高まる。しかし、睡眠不足の状態になると交感神経が優位になる時間が長くなり、神経伝達物質のアドレナリンが大量に分泌される。血流を増やし血管を収縮させるため、血圧が上昇し、それだけ心臓の負担が増えて疲弊したり、動脈硬化が促進されてしまうという。
 「いびきをかく睡眠時無呼吸症候群の人は、狭心症や心筋梗塞、心房細動といった病気が起こりやすいのも同じ理屈です。夜、寝ている間に何回も呼吸が止まり低酸素状態を繰り返すことで、交感神経が活性化してしまうのです。さらに睡眠不足は、食欲を増進させてしまう。睡眠時間が足りないと体はストレスを感じ、食欲を抑制するホルモンのレプチンが減少して、逆に食欲を増進させるグレリンというホルモンを分泌されやすくなることから、過食につながってしまうのです」(同)

 過食の状態は、もちろん肥満を招き、糖尿病や高脂血症を招いてしまう。肥満、高血糖、高コレステロールは、いずれも代表的な心臓病の危険因子。いくつも積み重なると、さらに心臓病の発症リスクがアップするという。そうしたことからも、睡眠不足は心臓にとって大敵なのだ。
 「夜になっても眠れない、十分な睡眠を確保できないという人は、まず睡眠を促してくれるきっかけを作るのもいいでしょう。個人によって変わってきますが、例えば、就寝前に自分が眠くなるようなアロマを利用したり、聞いていると眠くなる英会話のテープを流してもいい。そうした心身がリラックスできるようなきっかけを見つけて、就寝のタイミングに合わせそれを実践してみる。徐々に睡眠習慣が身につくはずです」(同)

 また、夜間に深い睡眠をしっかりとるためには、照明も重要になる。
 「眠りにつく3時間前には、テレビやパソコンのスイッチを切り、2時間前には薄暗い程度にまで照明を落とすことが理想とも言われています。脳の内分泌器である松果体から出るメラトニンは、“睡眠ホルモン”と呼ばれ、目から入る光の量が減ると増えてきます。それを促すためにも、光が入らない環境を整えることが大切なのです」(前出・専門医)

 また寝る前の食事も、睡眠を妨げる原因となる。
 「満腹だと副交感神経が優位になって眠くなるのではないか、と考える人がいますが、それは間違いです。寝ている間に消化器官が食べ物を消化しようと活動するために眠りが浅くなってしまい、脳を休めるのに必要な深い睡眠ができなくなってしまうのです」(健康ライター)

 健康の維持のため、ぜひ快眠を心がけよう。

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