森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 高速料金値上げの本当の意味

政治・2013/12/13 15:00 / 掲載号 2013年12月26日号

 TPP参加や減反廃止などで進む地方斬り捨てに、また一つ新たな項目が加わった。4月から、高速道路の割引が廃止・縮小される。11月29日、高速道路3社が、来年4月から実施する新しい高速料金の割引案を国土交通省に提出したのだ。

 料金案によると、まず東京・大阪圏以外で行われてきた平日の昼間(9時〜17時)の3割引が廃止される。通勤割引(6時〜9時、17時〜20時)は存続となるが、対象を1カ月に複数回利用する人だけに限定する。つまり、観光客やビジネス客を割引対象から排除し、通勤利用者に限定するのだ。
 都市住民が一番利用している休日割引も存続するが、現行の5割引から3割引へと割引率を縮小する。さらに、東京・大阪圏内の高速道路は、休日・昼間の3割引が廃止される。夜間は5割引を3割引に縮小し、割引の対象となる時間も、現行の22時〜6時が、0時〜4時に短縮される。東京・大阪圏で平日に高速が割引になるのは、1日たった4時間だけということになる。

 なぜ、こうした割引縮小をしないといけないのかと言えば、財源がないからだ。いまの高速道路料金割引は、3兆円の財源を取り崩して使っている4000億円の国費と高速道路会社自身が負担している5000億円の自主財源の二つが使われている。このうち国費は、自民党政権時代の'08年に作った3兆円の財源を今年度で使い果たしてしまうのだ。'08年当時に3兆円もの国費を注ぎ込んだ目的は、三つあった。一つは景気対策であり、二つは地方経済の活性化、三つは道路混雑の緩和だった。
 このうち道路混雑の緩和には大きな効果はみられなかったというのが、今回割引率縮小の根拠の一つになっている。確かに休日の高速道路は、特に三連休のときには、大渋滞を引き起こしている。しかし、逆に言えば、それは大きな経済効果を生んでいるということでもあるのだ。都会から地方に多くの人がドライブに出かければ、当然地方にお金を落とすからだ。つまり、高速道路の割引で、景気拡大と地域経済振興が同時に図られたことになるのだ。

 今回の割引制度の変更は、一見すると東京・大阪圏に負担を強いるもののようにもみえるが、実は一番被害を受けるのは地方なのだ。
 また、今回の高速道路の割引率縮小は、単純計算で、消費者物価を0.1%ほど引き上げる。ただでさえ、消費税率引き上げと日銀の金融緩和で来年度は物価が大きく上昇するのに、そこに輪をかける形で、物価が上昇していくのだ。当然、景気に冷や水をかける結果になるだろう。
 今年度の税収は、景気の回復に伴って、前年比で4兆円から5兆円増える見込みだ。景気対策として4000億円くらいの国費を高速道路割引に注ぎ込むことなど、何の問題もないはずだ。しかし、それは行われない。公共事業の拡大と比べて、料金割引は国民が喜ぶだけで、何の利権も生まないからだろう。

 ただ、もうひとつこの割引縮小で喜ぶ人たちがいる。それは富裕層だ。富裕層も庶民と同じ高速道路を走る。高速道路料金が上がれば、庶民が高速道路を利用できなくなるから、富裕層は空いた高速道路をスイスイと走れるようになる。「貧乏人は下道を走れ」というのが富裕層の本音なのだ。

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