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やくみつるの「シネマ小言主義」 ホームドラマを映画館で堪能する時代! 『家族はつらいよ』

掲載日時 2016年03月18日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年3月24日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 ホームドラマを映画館で堪能する時代! 『家族はつらいよ』

 「20年ぶりの『男はつらいよ』か?」と思わせる題名から、山田洋次監督の集大成的な映画かと思いきや、どえらく軽い喜劇です。

 京塚昌子や森光子が活躍していたようなホームドラマ全盛時代であれば、1話分くらいのストーリー。ふと気付けば、テレビのホームドラマは絶滅状態ですから、こういう話も映画館で見る時代になったんだなあ〜と、遠い目になります。

 近頃は新宿ゴールデン街で映画論を交しているような監督が作る邦画が多い中、このくらいベタなホームコメディなら、老若男女が安心して見られます。

 「老年」離婚寸前の両親に翻弄される子供たちと、それぞれの家族が描かれていますが、自分が感情移入してしまったのは、妻夫木聡が演じた三男のポジション。監督いわく、「厄介で、煩わしくて、でも切り捨てるわけもいかない」家族関係をなんとかうまく修めようと奮闘します。

 お恥ずかしい話、私自身の家族関係はしっちゃかめっちゃか。なぜこの映画のような、密な関係を築けなかったか…という忸怩たる思いが常にあります。妻夫木君の婚約者役の蒼井優が、エゴがぶつかり合う“ドタバタ家族会議”の様子を見て「うらやましい」と語る場面がありますが、まさに同感です。監督の主眼も「みなさん思い出してください、こういう関係を!」というところにあるのでしょう。

 キャストは2013年の映画『東京家族』と同じ、気心の知れた面々で芸達者な人ばかり。撮影はさぞやスムーズに進んだのだろうと思いきや、パンフレットによると、山田監督のこだわりは半端ないらしく、セリフの言い方や、“間”に厳しくも緻密な演出が入ったそうです。

 計算されきった演技らしいのに、とてもそうは見えないところがミソです。そして、見ているこちらの頬がフッと緩むくらいの笑いの小ネタをちょこちょこ挟んできます。たとえば、西村雅彦演じる長男が、父親が乗った救急車に同乗した際、父親の年齢を書き込む用紙につい自分の齢を書いてしまったり…。そのさりげなさが、山田監督の喜劇なのでしょう。

 さらに、かねがね私が申し上げているおやじの夢「なじみの居酒屋」も出てきます。今回のママ役は風吹ジュンです。

 男性にだけ疑似恋愛の場所が用意されているわけではありません。奥様側にも「素敵なナイスミドルの先生がいる小説教室」が用意されています。となるとこの映画、綾小路きみまろのトークを聞いて大笑いしている世代がど真ん中なのかも…。

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

家族はつらいよ
監督/山田洋次 出演/橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優ほか 配給/松竹 3月12日 全国ロードショー。
 三世代同居の平田一家の主・周造(橋爪功)は隠居生活を送っている。その日も仲間とゴルフを楽しんだ後、小料理屋で盛り上がり上機嫌で帰宅。ふと寝室に飾られたバラの花瓶を見て、妻・富子(吉行和子)の誕生日であることを忘れていたことに気付く。そこで、妻に誕生日プレゼントでもしてやろうかと欲しいものを聞いてみると、富子が机から持ち出してきたのはまさかの離婚届であった。離婚話に周りは大慌て。すぐに家族会議が開かれるが、それぞれが抱えてきた不満が噴出してしまう。

画像提供元:(C)2016「家族はつらいよ」製作委員会

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