葉加瀬マイ 2018年11月29日号

「プロレス解体新書」特別編3 キラー・カーンが語る 俺の名勝負!

掲載日時 2017年09月11日 14時00分 [スポーツ] / 掲載号 2017年9月14日号

 夏の特別編第3弾はキラー・カーンの登場。モンゴリアン・チョップで知られる“蒙古の怪人”が、アンドレ・ザ・ジャイアントとの抗争をはじめ、リング外での交流も含めてじっくりと語った!

 名勝負を一つ選べといっても難しいなあ。自分で言うのも何だけど、アメリカではWWF(現WWE)でボブ・バックランドやアンドレ・ザ・ジャイアント、ハルク・ホーガンらとやった試合もよかったし、他にもテッド・デビアスやダイナマイト・キッドとの抗争は連日満員で、プロモーターから「ファンタスティック!」とベタ褒めされたよ。
 日本だと、猪木さんや辰っつぁん(藤波辰爾)との試合もよかったけど、それでもあえて選ぶなら、やっぱり蔵前国技館のアンドレ戦かな(1982年4月1日、第5回MSGシリーズ決勝戦)。

 実はアンドレが初めて新日本プロレスに来た頃、俺は外国人係として身の周りの世話をしたこともあってね。だからアンドレは俺のことを1回たりともキラー・カーンと呼んだことはなくて、いつも「オザワ、オザワ」って呼んでくれました(本名は小沢正志)。
 俺もアンドレの人間性は知っていたし、お互いに気心が知れていた。そういう者同士がやると、自然といい試合になるんです。もちろんアンドレ自身が試合巧者だったし、プロレスがどういうものかをよく心得ていた天才ですから、俺も闘いやすかったしね。

 プロレスラーというのは、第一にお客さんを動員できなきゃいけない。中でもメインイベンターは一番責任があるわけで、そこでお客さんを呼べなければやっぱり二流なんですね。
 その点で言っても、アンドレはどこでもお客さんを呼べた超一流です。ワシントンかどこかの大会場に、当時、人気上昇中だったロード・ウォリアーズが来て8割ぐらい埋まったらしいんだけど、その2週間後に俺とアンドレでメインイベントをやったら、お客さんが入りきらなかったことがありました。そのときはうれしかったですよ。

 いわゆる“足折り事件”については、俺が喉元を狙ってニードロップを放ったときに、アンドレが急に立ち上がって足首に当たっちゃった事故です。
 アンドレがリングで足をひねって、そこを俺が臨機応変に攻めたというのは、高橋さん(ミスター高橋)が本を書いたとき、面白おかしく話を盛っただけで、真実とは違うんですよ。

 まあ、それで日本でもアンドレと闘うことになりました。蔵前での試合はアメリカとは逆で、アンドレがヒール(悪玉)で俺はベビーフェース(善玉)のような感じでしたけど、ファンの半分はアンドレの応援だったんじゃないですか。
 もともとは猪木さんとアンドレが決勝で闘う予定だったのに、猪木さんが負傷欠場して俺はその代役でした。だから正直に言えば、最初は“とにかく長い時間リングに立って、できる限りの試合をしよう”と思っていたんです。だけど試合が進むうちに、俺がアンドレに対抗できたのもあって、お客さんから「小沢、小沢」ってコールが起きてね。それで闘志が湧いたのを覚えていますよ。

 同年のMSGシリーズは全14選手による総当たり戦で、リーグ戦のトップ通過がアンドレ、2位が猪木だった。しかし、猪木はシリーズ中のアンドレ戦で左ひざを痛め、さらに決勝前日、テキサス・アウトローズの攻撃により状態が悪化。当日棄権となり、3位のカーンが繰り上がりで決勝に臨んだ。アンドレの足狙いで攻勢に出たカーンは、チョップの連打でぐらつかせるなど見せ場をつくったが、最後はアンドレがヒップドロップで勝利を収めた。

 アンドレとの対戦で、俺がピンフォール勝ちしたことは結局1回もないですね。今だから言うけど、一度だけアンドレが試合前に人を介して、俺に「今日はボディスラムで投げろ」と言ってきたことがありました。だけど俺は、「いや、そんなことできるわけがない」と断ったんです。そしたらアンドレは、「オザワは人がいいなあ」と言ってくれたけどね。
 ボディスラムで投げること自体は、お互いにタイミングを合わせればできるんです。でも、箔付けのために頼み込んで投げさせてもらうんじゃなく、アンドレ自身がそうやって俺のことを認めてくれたことだけで十分ですよ。

 そんなこんなでアンドレは、最後まで俺のことを気に掛けてくれました。アンドレが亡くなった後に人づてに聞いたんだけど、「オザワが店をやっているんだったら、日本に行ったときにそっと訪れて驚かしてやるから、そのことは黙っておけ」なんてことも言っていたそうです。
 それを知ったときは、もう本当に涙が出ちゃった。アンドレってそういう心の温かい人間だったよね。

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