彩川ひなの 2018年7月5日号

バンドのファン同士でコンタクト SNSを漂流して殺された女(3)

掲載日時 2017年12月11日 23時00分 [事件] / 掲載号 2017年12月14日号

 ところが、美樹は川西と同棲して1カ月もしないうちに音を上げた。
 「あの人おかしい。下の毛を剃ったり、アフターピルを飲まされて、バイトのない日は1日中閉じ込められてセックスさせられる」
 こうした悩みを打ち明けられるのは、やはり元カレたちだった。美樹は次々と昔の関係を復活させた。

 事件前日、美樹は平松に連絡を取り、〈あなたの家に帰りたい。逃げようとするとレイプされる。無理やりヤラれて暴力を振るわれた〉とLINEした。
 平松は美樹を保護した。
 「もうあんな家は出たい。でも、シオンを置いてきちゃったのよ。シオンだけは取りに帰りたい…」
 シオンというのは美樹がかわいがっていたハムスターである。そのことは平松もよく知っていた。

 事件当日、平松は美樹に付き添って川西のマンションを訪れ、荷物の引き渡しを求めた。
 平松は「何かあったら踏み込むからな」と言って、玄関ドアを靴で挟んで開けたままにさせていたが、一度口論が聞こえたので入ってみたところ、「あなたも心配なら同席されたらどうですか?」と言われ、「お前みたいなレイプ魔と話す気はない。早く終わらせろ」と言って退散し、玄関ドアを閉めさせた。しかし、それが裏目に出た。

 その直後、美樹の悲鳴が響き渡り、平松は隣室の住人に頼んでベランダ側から侵入したが、そこには血まみれの美樹が倒れており、川西が「ワハハハ!」と高笑いして玄関から出て行くところだった。
 平松は警察と救急車を呼んだが、美樹は頸動脈離断により失血死した。

 川西は逮捕直後、「自分がやったことに間違いありません」と犯行を認めていたが、しばらくすると「自分の中に存在する別人格がやったことで、犯行時の記憶が全くない」と訴えた。
 精神鑑定の結果、ある精神科医は「詐病」と断定したが、別の精神科医は「子供時代に受けた心的外傷の数と一致する6つの人格が見られる」という鑑定書を提出した。
 裁判所は「被告が事件当時、解離性同一性障害(多重人格)だったことは認められるが、周囲の状況に応じて合理的な行動を取っており、完全な責任能力が認められる」として、懲役16年を言い渡した。

 2人はある種の自殺願望があった。〈未来に希望が持てなくなったら殺し合おう〉という好きなバンドの歌詞のフレーズに共感していた。川西はそれが殺害の動機だと説明した。
 今やネット社会の成熟で内面の合う者同士がマッチングされ、外的な要因は二の次だ。これからも不可解な殺人事件は多発するに違いない。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

関連タグ:男と女の性犯罪実録調書

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