葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(79)

掲載日時 2015年11月07日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年11月12日号

◎快楽の1冊
『ありがとうございます』 内田裕也 幻冬舎アウトロー文庫 540円(本体価格)

 10月7日に橘家圓蔵が亡くなった。81歳だった。戦後70年、平成も27年となり、私たちはいつしか昭和を懐かしむようになっている。圓蔵はまさしく昭和の絶頂期に、先代の三遊亭圓楽、立川談志、古今亭志ん朝とともに江戸落語四天王と呼ばれ、人気を博した。3人はすでに亡くなっていたが、とうとう圓蔵も鬼籍に入った。先週号で、医療の進化によって、これから私たちの多くは100歳まで生きるかもしれない、と書いたけれど、もちろんすべての人がそうなるわけではない。早い人はもっと早いだろうし、また70代〜80代で亡くなることは特に珍しくはない。
 それは落語家以外の俳優、歌手など、ほかの表現者も同様だ。訃報に接すると人々はショックを受ける。例えば昨年の高倉健、菅原文太の死を悲しんだ人は数えきれないだろう。さらにさかのぼれば、松田優作は1989年に40歳で亡くなったが、残されたファンたちはすぐには忘れず、かつての作品を観ながら惜しんだり、あるいは懐かしさを楽しんだりするわけだ。現在、雑誌の形で『松田優作DVDマガジン』(講談社)が定期的に発売されている。
 圓蔵の死はまた昭和を懐かしむことにつながりそうだ。かつて昭和生まれの人が、明治、大正を昔のことと捉えていたように。
 しかし、そんな中でもいまだに血気盛んな男がいる。内田裕也だ。1939年=昭和14年に生まれた彼は、つまりは昭和を生き抜いて今は70代半ばになっているのだが、昨年刊行された本書『ありがとうございます』を読むと、まさにその生きざまが伝わってくる。過去の交遊録を軸にした自伝エッセイである。優作はもちろん、ジョー山中、安岡力也も話題に挙げ、年下の故人の分も生きているようなパワフルさがみなぎっている。もしかしたら奇跡的なバイタリティーの持ち主なのかもしれない。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 本屋に並んでいた書籍『マンガでわかるオトコの子の「性」』(合同出版/1400円+税)は、性教育や保健体育の関連本だ。購買対象は中高生と、その母親たちだろう。本誌読者にとっては「何を今さら」といった内容に思えるが、そういわず、読んでみると面白い。
 例えば“LGBT”という言葉が登場する。ご存知だろうか。レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(性同一障害など)の頭文字を並べた用語で、つまり同性愛者を指している。
 昭和の頃と違って、現在の中高生向け性教育には、こうしたテーマが不可欠ということだろう。
 また「避妊」「性暴力」など、AVの普及によって間違った知識を植えつけられた子供たちに向け、正しいセックス方法を解説しているが、意外にもオヤジ世代に役立つ情報も数多い。レイプまがいの乱暴な性交でも、女性は感じると思っている男は、むしろ中高年に多そうだからだ。
 「性病」というテーマでは、予防に「包茎治療」が挙げられている。実は包茎の人ほど、性病にかかりやすいという事実も、あまり知られていないのではなかろうか。
 著者の染矢明日香さんは、性の在り方を若い世代に伝えることを目的に設立されたNPO法人の理事長だ。
 学校教育の現場や家庭では、相変わらず「性」の問題への取り組みが遅れがちらしい。かねてより性の後進国といわれる日本において、こうした書籍が注目されるのも時代の流れといえるだろう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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