菜乃花 2018年10月04日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 地元の偉人=「じもキャラ」認定を! 『殿、利息でござる!』

掲載日時 2016年05月23日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年5月26日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 地元の偉人=「じもキャラ」認定を! 『殿、利息でござる!』

 「ライト感覚の時代劇」で、楽しめました! 今から250年前の江戸時代。仙台藩下の宿場町に実在した人々のリアルな感情をイキイキと描いています。江戸時代とはいえ、市井の人はやっぱり細けぇことを考えて右往左往していたんだな…とうかがえて楽しいです。
 思えば、どの土地にもかつて暮らしを営んでいた人々がいて、今の自分たちの生活はその歴史の先に成り立っているという、普段はすっかり忘れていることを思い起こさせてくれます。

 この映画が、こんなにも心地よく感じられるのはなぜか、を考えてみました。
 まず、よくこんなロケ地を探せたなと思うほど、映画に出てくる場面、場面が、日本人の琴線に響く原風景なんです。
 それから、阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡など旬の役者たちが贅沢に揃っている登場人物たちに、悪人が1人もいない。ま、いけ好かない人物はいても、根は悪人ではない。何しろ、磯田道史原作の題名が『無私の日本人』です。
 重税にあえぎ、破産と夜逃げが相次ぐ仙台の宿場町・吉岡を救うために、なけなしの私財を投じて、奇想天外な企てを実行する庶民。しかも「そのことを子々孫々にまで自慢してはならない」という“つつしみの掟”までを自らに課す。よくできた、ちょっといい話だと思ったら、なんと“実話”だというのですから驚きです。

 全国的な知名度こそないけれど、地元では皆が知っていて、今も敬愛されている「故郷の偉人」が各地に必ずいます。よく地方の街角で「○○の生家はこちら」みたいな看板が立っていたりしますが、先日も三重県の近鉄・中川駅で「松浦武四郎の生家」の文字を見つけました。私はそういうのが好きでチェックすることが多いのですが、この人物は「北海道という名称の名付け親」でした。
 「ゆるキャラ」が全国に乱立して、いささか飽和状態になった今、私はこういう「故郷の偉人」をキャラクター化した「じもキャラ」をつくって地元PRに役立ててはどうかと提唱しております。
 すでに、別府を温泉観光地に盛り立てた「油屋熊八」などは、「じもキャラ」としてひと役買われています。この映画の主人公の穀田屋十三郎も、ぜひ「じもキャラ」認定したいところ。

 話は映画に戻りますが、仙台藩の殿様役で羽生結弦が出演しています。これがなかなかのもの。セリフ回しも堂々と、ちゃんと「殿様」をしています。映画館に「ゆず」ファンたちが押し寄せ、しまいには、助演男優賞を獲ったりして…。

画像提供元:(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

■『殿、利息でござる!』監督/中村義洋 出演/阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、きたろう、千葉雄大、橋本一郎、中本賢、西村雅彦、濱田岳(ナレーション)、重岡大毅(ジャニーズWEST)、羽生結弦、松田龍平、草笛光子、山?努 配給/松竹 5月14日(土)全国ロードショー。
 金欠の仙台藩は百姓や町人へ容赦なく重税を課し、破産と夜逃げが相次いでいた。町の将来を心配する十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者の篤平治(瑛太)から宿場復興の秘策を打ち明けられる。それは藩に大金を貸し付け利息を巻き上げるという、百姓が搾取される側から搾取する側に回る逆転の発想であった。計画が明るみに出れば打ち首確実。千両=3億円の大金を水面下で集める前代未聞の頭脳戦が始まった。

■やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

関連タグ:やくみつるの「シネマ小言主義」

エンタメ新着記事

» もっと見る

やくみつるの「シネマ小言主義」 地元の偉人=「じもキャラ」認定を! 『殿、利息でござる!』

Close

マダムとおしゃべり館

▲ PAGE TOP