菜乃花 2018年10月04日号

話題の1冊 著者インタビュー 高橋洋子 『のっぴき庵』 講談社 1,600円(本体価格)

掲載日時 2016年09月04日 14時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年9月8日号

 −−13年ぶりの小説は俳優同士が集まる老人ホームが舞台です。このタイミングで上梓した理由は?

 高橋 気が付けば13年も経っていましたね(笑)。今までは私小説が多かったのですが、ずっとエンターテインメント作品を書きたいと思っていました。かつての東京オリンピックがあった60年代は、社会がどんどんよくなって行くという期待感に満ちていました。70年代に私は女優としてデビューしましたが、NHKの朝ドラ『北の家族』のヒロインを務めていた頃は、ホームドラマや映画などの芝居の仕事もたくさんありました。しかし、平成になってからは役者の世界も全般的に仕事が少なくなってきたようです。高齢化社会になった今、かつてスポットライトを浴びた役者たち、この『のっぴき庵』に出てくる彼らが、老いてもなお、芝居に目を輝かせる。そういう世界を書いてみたいと思ったんです。

 −−役者魂は何歳になっても健在ということですね。来春、28年ぶりに銀幕復帰もするそうですね?

 高橋 死ぬなら舞台の上で、と役者はよく言いますよね。役者に定年はありませんから、自分がやろうと思えばいろんな役ができるわけです。小説の中の主人公にも言わせているんですが、役者は演技に入り込んだときに、自分の業などをかなぐり捨てて、陶酔感や達成感がやってくるんです。もう、私欲など消えてしまう。そんな部分が演じる楽しみでもあり、ワクワク感を感じるところでもあるんです。役者の本音、悩み、自由そうに見えて不自由なところ、世間に忘れられたら…という不安感、表面的には見えづらい部分ですが、本作ではそんな役者たちの心情なども描いてみました。

 −−かつては芥川賞候補にもなりました。小説と芝居、どちらが自分に合っていると思いますか?

 高橋 30〜40代の頃は仕事の割合的には同じくらいだったのですが、50歳を過ぎてからは書く方が多くなりましたね。私流に言えば書くことは継続力、演技は瞬発力。だから、どちらがメインということはないですね。小説を書くには世間のいろいろなことを知らないとダメでしょう? 暮らしぶりとか一般常識とか。今は時間のあるときにより見聞を広めようと心掛けています。

 −−今後はどんな作品を書きたいですか?

 高橋 今の時代は暗雲立ち込めていますよね? この『のっぴき庵』にも込めたのですが、自分の心の闇をストローでフーッと吹き消しながら、最後には希望を見つけるというような小説を書いていきたいですね。
(聞き手/程原ケン)

高橋洋子(たかはし ようこ)
1953年東京生まれ。1972年に映画『旅の重さ』でデビュー。翌年にはNHK朝の連続テレビ小説『北の家族』のヒロインを務め人気を博した。1982年『通りゃんせ』が第87回芥川賞の候補作となり注目を集める。

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