菜乃花 2018年10月04日号

南海トラフ巨大地震 消える市町村145万世帯(2)

掲載日時 2017年04月07日 10時00分 [社会] / 掲載号 2017年4月13日号

 太平洋側の沿岸部には、そのような町が少なくない。
 三重県南東部の鳥羽市は'12年、内閣府の発表により南海トラフ巨大地震による最大津波予想高が24.9メートルから27メートルに引き上げられている。
 「それまでは“揺れが来たら逃げろ”と呼びかけてきたが、答志島など離島内の道は非常に狭い。それらが家屋の倒壊などで塞がれる可能性が高いため、他の避難路を探したり、高台までは手すりを設置するなどの対策はすでに取っているが、被災後に流出した住民が戻ってくるかどうかは分からない」(鳥羽市関係者)
 三重県の志摩市にも最大26メートルの津波が押し寄せるとされ、高台のない低地部には避難タワーの建設や土盛りをした「命山」の築造も検討されている。さらに、被害想定を反映したハザードマップを作成して各戸に配布しているが、人口流出の対応策となると、お手上げなのだ。

 しかし、妙案を考え出した地域もある。
 「人口流出を防ぐため、徳島県美波町の由岐地区では、あらかじめ復興の方針を決める“事前復興”と呼ばれる取り組みを5年前から町と住民で進め、先頃、計画の素案がまとまったのです」(地元記者)

 それによれば、住民が移転する高台や、かさ上げする土地などを事前に話し合って決定。例えば、内陸の一部では、地震で家を失った住民のための住宅地が整備できるよう、あらかじめ土地の所有者に許可を得たうえで、分かりやすく模型を作って被災後に整備する住宅地の姿を決めるという。
 「住民と町の合意形成を事前に済ませ、いったん人口が流出しても安心して再び町に戻ってこられるようにするのが狙いです。この町はもともと過疎化に悩み続けてきたことから人口流出問題にはナーバスになっており、震災後に地域を継続させるための合意形成をしやすい土壌があったのです」(同)

 東日本大震災後、被災地の太平洋沿岸部では、いまだ内陸部へ移転したまま住民が戻らない町が多くある。6年経っても故郷の環境が変わらない現状があるからだ。今回の人口流出のシミュレーションをまとめた東大の広井悠准教授も、「あらかじめ復興の手法や手順をまとめるなど長期的視点に立った対策が必要だ」と話している。
 「首都直下型の巨大地震でも同様です。都内に住めなくなった人が地方に疎開することになる。政府の早急な対応が必要なのです」(前出・渡辺氏)

 問題は地震や津波そのものだけではないのだ。

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