祥子 2019年5月30日号

〈男と女の性犯罪実録調書〉③辛い記憶が殺意に変わる

掲載日時 2019年03月14日 00時00分 [官能] / 掲載号 2019年3月21日号

 智子が市村のアパートに押し掛けると、明らかに居留守を使われ、パニックになった。玄関ドアのU字ロックの開錠方法を調べ、部屋の中に押し入ると、見知らぬ男性が一緒にいた。
「この人誰?」
「先輩だよ」
「危ないので、外に出て行ってください」

 智子の剣幕に気おされた男性は外に出て行き、市村と2人だけになった。智子はキッチンから包丁を持ち出して暴れ、剣道の心得があった市村が迎撃すると、自分の足を包丁で切ってしまった。すごい血が流れ出てきたので、2人は救急車を呼び、話し合いは中断。幸いにも傷は浅く、その日のうちに帰ることができたが、市村と別れてから智子の頭の中はゴチャゴチャになった。
「お金のことを話しても取り合ってくれず、今までされてきたことや辛い記憶がよみがえってきて、もうイヤだ、こんな生活は続けたくないと思い、インターネットで自殺の方法を調べました。首吊りはうまくいかず、酒と薬を大量に飲むことにしました」

 次に気が付いたのは大学病院のベッドの上だった。智子の兄が運んだのだ。2日間入院した後、退院後は兄の家で1泊することになった。
「自殺なんかしちゃいかん。自分の命を大切にしろ」

 しかし、兄に自分のアパートまで送ってもらって、1人ぼっちになると、また辛い記憶がよみがえってきて、市村に対する殺意が芽生えた。

 事件当日、智子は深夜に起きたとき、まだ市村に対する殺意が消えていなかったことから、リュックサックに包丁を入れて市村のアパートに向かった。

 以前と同じ方法で侵入し、部屋に入ると、市村がテレビをつけっぱなしにしてソファで寝ていた。
「辛い記憶もありましたが、楽しい思い出もあったので、彼の足元に座って30分ぐらい考えました。でも、最後は辛い記憶の方が勝ってしまい、包丁を振り上げ、そのまま重力に任せて下ろしました。刃先は彼の鎖骨あたりに刺さりました」

 市村は目を覚まし、体を起こそうとしたが、すぐに呼吸がおかしくなった。

 智子は自分も自殺しようと思い、一度、自分のアパートに戻って、また酒と薬を大量に飲んだ。

 再び市村のアパートに戻り、その横で手首を切って、市村に寄り添うように意識を失った。
「いつか私の声が届く日が来るだろう、頑張ってくれるだろう、そんな期待もありました。それが何度も裏切られて、辛くて…、悲しくて…、こんな事件を起こしてしまいました」

 2人は阪神大震災も知らない世代だ。それでも同種の事件は起き続ける。智子の親族は1000万円の被害弁済をしたが、智子は懲役13年を言い渡された。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

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