鈴木ふみ奈 2018年11月1日号

金を積んでも示談できず… 大企業エリート社員の“甘すぎた”強制わいせつ認識(3)

掲載日時 2018年05月21日 23時00分 [事件] / 掲載号 2018年5月24日号

 とりあえず弁護士は検察を通じて被害者と掛け合ったが、美月さんも七海さんも「金は要らない。絶対に許さない。厳重に処罰してほしい」と断った。
 「おかげでバイトを辞めることになってしまった。誰かと電話をしながらでないと、外を歩けなくなってしまった」(美月さん)
 「犯人にどんな事情があろうと知りたくもないし、関わりたくもない。示談するなんて100%あり得ない」(七海さん)

 中村が大企業社員であったことから、事件はセンセーショナルに報道され、勤務先は「事実であれば、誠に遺憾。厳正に対処する」とのコメントを発表。中村は起訴されるのと同時に懲戒解雇処分となった。
 そのために悲惨な目に遭ったのは社宅に住んでいた妻子だ。当然、そこからは追い出されることになり、妻は子供を連れて自分の実家に戻った。

 仕事を探したが、容易には見つからない。唯一、門戸が開かれていたのが風俗の仕事だった。妻は子供を実家に預けて、風俗店の寮に入り、デリヘル嬢として働き始めた。そのことを中村は塀の中で知った。
 「背に腹は代えられない。突然、収入源がなくなり、退職金も出ず、このままでは生活が破綻すると思いました。金のための仕事だと割り切り、何も考えないようにしました」(妻の供述)

 中村は、想像以上に自分がしでかした愚行によって周囲に迷惑を掛けていることを知り、震え上がった。それでも妻は「夫は家事全般を手伝ってくれるよき夫だったし、子供に子守歌を歌って寝かしつけてくれるよき父親だった」と説明し、離婚する考えはないことを明らかにした。そんな妻に中村は頭が上がらない。
 「本当にバカなことをした。すべて自業自得だが、妻に恥をかかせ、これほどまでに傷つけてしまい、人生を狂わせてしまった。私は被害者のこともナメていました。金さえ払えば示談できるだろうと、どこかで軽く考えていました。でも、今は違います。被害者にとって、その傷は一生癒えることはなく、私の存在自体が苦しみを倍増させ、不愉快極まりないものであることを理解しました。今となっては謝罪することさえ許されませんが、せめてもの罪滅ぼしとして、弁護士会に贖罪寄付しました」

 だが、中村が一生苦しむのは確実だ。いったん報道された性犯罪者の実名はインターネットの世界をさまよい続け、いわば“社会的制裁”は一生続くのだ。
 いつか中村の1歳の息子にも事件のことを知られる日が来るだろう。そのときにどう説明するつもりなのか。最終的な審判は息子から下されるのだ。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

関連タグ:男と女の性犯罪実録調書

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