森咲智美 2018年11月22日号

北朝鮮開戦3秒前 米国CIA対旧ソ連KGB 金正恩暗殺の攻防戦(2)

掲載日時 2017年08月17日 12時00分 [社会] / 掲載号 2017年8月24・31日号

 そこで問題になるのは正恩委員長の居どころをつかむことだが、この点について前出の太永浩氏は「北朝鮮の高位層も正恩がどこで仕事をしているのか、どこで寝泊まりしているのか分からない」と、把握は容易ではないと証言している。
 「戦争遂行のため地下バンカーに移動するには各種車両や汽車を利用するはずですから、その際、随行員らの間で交信が行われるのは確実です。それをキャッチした米国の偵察衛星が居場所を確認し、各種攻撃手段が動員されるでしょう。イラク戦('03年)当時、フセインの隠れ場を緊急打撃した作戦では、位置把握から打撃までわずか45分しかかかりませんでした」(軍事アナリスト)

 もちろん、CIAは地上でのヒューミント作戦にも着手している。ロシアや旧東欧などに出稼ぎに来ている北朝鮮労働者をスパイに仕立て上げるのだ。北朝鮮は“志操堅固”でなければ外国に出さないことから、出稼ぎ労働者といっても監視役や技術者はかなりのエリートだ。だから怪しまれずに北朝鮮に帰国できる上、それなりの立場なので権力中枢にも近づきやすい。例えば正恩委員長の身辺警護をする保衛司令部員は、随行者で唯一銃の携帯が許されているから、心臓目掛けて銃弾を撃ち込むことも不可能ではないという。
 「北朝鮮の市民は、正恩が三男で兄殺しの大罪を犯したことを知りません。金ファミリーの金満ぶりもビラに書き込み、無人機で上空から投下することもCIAは検討していると思います。また正恩政権の権威の象徴である金日成・正日親子の遺体が安置されている『錦繍山太陽宮殿』を爆破すれば、軍部や党、市民に動揺が走るのは間違いありません。宮殿は厳重に警備されていますが“斬首作戦”よりはるかにたやすい」(北朝鮮に詳しい軍事専門家)

 斬首作戦に怯える正恩委員長は今や後見人となったプーチン大統領に泣き付き、テロ鎮圧などを得意とする旧KGBの精鋭部隊の一部を送り込んでもらい、身辺警護や北朝鮮軍の訓練に当たらせている。水面下でCIA対旧KGBの暗闘は始まっているのだ。

 北朝鮮で“宮廷内・軍事クーデター”が起こる可能性は微塵もないのか。
 正恩政権下では実質ナンバー2の座にあった叔父の張成沢国防副委員長をはじめ金哲人民武力部副部長、玄永哲人民武力相、李英鎬軍総参謀長、全昌復人民武力部第一副部長、辺仁善軍第一副参謀長兼作戦局長ら多くの党・軍幹部が粛清され、亡命者まで出ている状況だ。

 ところが、それをかいくぐっての正恩暗殺未遂事件が発覚したという。
 「張成沢の実兄である張成禹が1996年から軍団長の座にあった『第3軍団』は“張成沢に近い部隊”と見られてきたのですが、謀議が発覚したのは今年1月ごろでした。同軍団は、首都・平壌の海の玄関口である平安南道の南浦に駐屯し、首都防衛の重責を担っていましたから、仮にこの部隊が決起すれば一気に平壌が陥落することもあり得たのです。謀議に参加したのは全部で17人。うち8人が第3軍団所属で師団長、副師団長、師団参謀長、連隊長という実戦部隊を指揮する地位にありましたが、密告で発覚し実行に至りませんでした」(北朝鮮ウオッチャー)

 クーデター派の除去作戦の指揮を任されたのは、スパイや反体制派の摘発を主に行う国家保衛省から検閲(監査)で不正や越権行為が指摘され、解任されていた金元弘だ。
 「金元弘はこれを失地回復の絶好の機会と捉えたようで、軍の反体制取り締まり部隊である機動打撃隊と護衛司令部の親衛隊である974部隊の人員を与えられ、1月中旬から下旬にかけてクーデター派を一網打尽にしたということです」(同)

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