菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(208)

掲載日時 2018年06月23日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年6月28日号

◎快楽の1冊
『こうして歴史問題は捏造される』 有馬哲夫 新潮新書 800円(本体価格)

 645年は「ムシゴメ(蒸し米)炊いて大化の改新」、と筆者の世代などは授業で覚えさせられたクチ。ところが最新の研究成果を取り入れた近頃の教科書では、「乙巳の変」と呼ぶ版元が大勢を占めるのだとか。
 同様に、せっかく語呂よく「いい国(1192年)作ろう」でおなじみの鎌倉幕府に至っては7年も前倒しされて、壇ノ浦で平家が滅亡した1185年をもって成立と、最近じゃみなすのだそうで。いやはや「いい箱、作ろう」じゃイナバ物置みたいにならないか?
 かの聖徳太子ですら急に「厩戸王」にされたり、そもそもいなかったことにされそうになったり。改めて歴史とは化石同然の永久不動の代物でなく、それを扱う時代の人間次第で微かに揺れ動き、絶えず呼吸するのが常なのは自明の理のはずだが、しかし、こと近現代史に限っては腫れ物に触れるかのごとく絶対不可侵で、少しでも“通説”に異を唱えれば即座に「歴史修正主義者(=リビジョニスト)」の烙印を押されて白眼視…というお決まりのコース自体がようやく疑問視されるようになった(長らくナチスによる蛮行とされてきたカティンの森でのポーランド軍兵士の虐殺が、ソ連崩壊後の情報公開で旧ソ連軍の犯行と明らかになったのも記憶に新しい)。
 本書は「日本テレビとCIA」はじめ、丹念な一次史料の検討を通じた数々の著作で戦後メディア史の闇を暴いてきた著者による歴史素材を扱う上での手引き、指南書である。重要なのはイデオロギーに拘わらず、プロパガンダに惑わされぬこと。
 “歴史リテラシーの涵養”に意識的に努めさえすれば、「南京事件」も「慰安婦問題」も「戦後補償はドイツに見習え」がいかに出鱈目かも、冷静に氷解されよう。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 1年間にデビューするAV女優は約2000人ともいわれるが、実数は定かではない。女優たちはAV引退後の人生をどのようにすごすのか。記憶に留まるメジャーなタレント7人の“その後”をインタビューしたのが『AV女優、のち』(KADOKAWA/880円+税)である。
 登場する7人は麻美ゆま、みひろ、笠木忍、長谷川瞳、愛奏、泉麻耶、真咲南朋。平成13年デビューの笠木と長谷川を筆頭に、10〜15年ほど前に活躍した人気女優たちだ。現在はそれぞれタレントや漫画家に転身したり、AV監督として制作側に回った真咲や、腫瘍摘出手術による闘病が話題となった麻美までさまざまだが、いずれもAV出演を「後悔していない」ときっぱり言い切る芯の強さを見せる。
 7人の元AV嬢の内、筆者は麻美、みひろ、長谷川の3人にはグラビア撮影の現場で、笠木には1度目の引退→AV復帰後のインタビューで会ったことがある。4人とも明るく、よく笑い、よくしゃべった。「私、変態だから(笑)」とアッケラカンとリアルな性体験を語る笠木は、セックスにタブーなど存在しないという正直で赤裸々な生き方を貫いていた。そんな堂々とした姿を思い出すと、「後悔していない」というのは本音だろうと納得できる。
 AVの映像や画像は、後々まで残ってしまう。だが、彼女たちはそれを「恥ずかしい」とは考えていない。AVに出るとは、覚悟を持つこと、そして、覚悟を持って生きる女性は力強いと感じさせてくれる1冊。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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