菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 貿易赤字にどう対処するか

掲載日時 2014年03月08日 11時00分 [政治] / 掲載号 2014年3月20日号

 1月の貿易統計で、貿易赤字が2兆7900億円と、過去最大になったことがわかった。赤字は19カ月連続となっている。
 貿易収支に、サービス収支や投資収益などを加えたのが経常収支だが、昨年1年間の経常収支は3兆3061億円の黒字と、かろうじてプラスを保ってはいるものの、このままでは経常収支の赤字転落が目前に迫っている。
 経常収支が赤字に転落すると、国際投機資本が日本の国債を攻撃してくる。日本国債が暴落することはないが、ある程度の金利上昇は避けられない。そうなれば財政負担も増えるし、思い切った国債発行ができなくなるなど、財政の自由度が制約されてしまう。

 大和総研の試算によれば、昨年の貿易収支は、空洞化の進展により約7兆円、原発の停止によって約4兆円悪化しているという。民主党政権が金融緩和を回避し続けたことによってもたらされた円高が、日本の製造拠点の海外移転を招くという形で、日本経済に大きな傷跡を残しているのだ。実際、1月の輸入額は、前年同月比25%増だったが、輸出は9.5%増の5兆2529億円にとどまった。しかも、数量ベースでみると、輸出は0.2%減となっており、円高が是正されたにもかかわらず、日本の輸出が一向に増えていないことが示されている。
 一度海外に移転した工場は、そう簡単には戻ってこない。それどころか、2月21日にホンダのメキシコ工場が稼働するなど、円高時代に計画された工場が次々に稼働しているのが実情だ。円高の傷跡が癒えるには、10年以上の月日が必要になるだろう。

 結局、経常収支の赤字転落を防ぐ当面の方法は、原発の再稼働しかないだろう。だから私は、安全性が確認できた原子炉を稼働させ、再稼働で得た利益を原発の廃炉費用に充てるべきだと、ずっと主張してきた。
 しかし、それは安倍内閣のもとでは、とても危険な選択肢になると、最近思うようになった。それは、安倍政権の最終目標が、日本をいつでも戦争ができる国に作り替えていくことだからだ。安倍総理は、憲法の解釈を変更することで、集団的自衛権の行使を可能にする「解釈改憲」を目論んでいる。憲法が禁じている武力の行使を、その解釈を変えることで実現しようとしているのだ。

 私が一番懸念しているのは、原発再稼働が、最終的に核兵器開発につながるのではないかということだ。もちろん、核兵器開発は憲法違反だが、憲法の解釈を変えてしまえば、例えば実際に核兵器を持たなくても、いつでも核兵器を作ることができるように準備をすること自体は憲法違反にならないという主張も、解釈改憲を許せば可能になる。
 現に石原慎太郎前東京都知事は、核開発のシミュレーション実施構想を明らかにしていたし、IAEA(国際原子力機関)が日本に行っている査察の重要関心事のひとつは、日本が核開発を行っていないかのチェックなのだ。
 原発を再稼働させなければ、日本の経常収支黒字を守れない。かと言って、再稼働させれば、核開発のリスクが高まる。結局、核開発のリスクを避けながら経済を回復させる方法は、安倍内閣に退陣してもらうことしかないのではなかろうか。

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