葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(95)

掲載日時 2016年03月05日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年3月10日号

◎快楽の1冊
『ガンルージュ』 月村了衛 文藝春秋 1500円(本体価格)

 フィクションの個性は、組み合わせの妙から生まれる場合が少なくない。ありきたりというのは、つまり、こういうストーリーはよく見るなあ、と読者に思わせるもので、個性がないわけである。
 本書『ガンルージュ』は何と、一介の主婦と韓国の特殊部隊が死闘を繰り広げるアクション・エンターテインメントだ。一介といっても、以前は警視庁公安部外事二課所属の巡査部長だったので、死闘に挑める能力はある。それでも現在は中一の息子を持つシングルマザーだ。主婦ヒロインの大活躍は、ものすごく斬新なのだ。
 舞台は群馬県のごく田舎の温泉町。秋来律子は旅館の清掃係をメーンの仕事にして、デイトレーダーとしても稼ぎ、生計を立てていた。祐太朗とアパートで2人暮らしだ。ある日曜日、親子で朝から買い物に出掛ける予定を組んでいた。ところが祐太朗に電話がかかってくる。同級生の神田麻衣だ。急用ということで、部屋から徒歩十五分ほどの神社跡に呼び出された。
 用件は、別の女子が祐太朗に惹かれたので、麻衣が仲介する、というものであったが、その女子は勝手で急に来るのをやめてしまった。当初の目的が消えた。そこへ近くにある別荘のような謎の施設から発砲のような音が聞こえた。韓国の特殊部隊が政治的影響力を持つ要人を拉致していたのだ。現場に居合わせてしまった2人も部隊に囚われ、拉致作戦の人質に…。
 主人公・律子の母性が爆裂する痛快かつディープなアクション・ストーリーだ。息子を救うためなら何だってする。この決意が彼女の尋常ではない大活躍につながっていくのだ。相棒となる女性教師もかなり勇敢で迫力がある。
 女性2人と少年が大の男たちと互角に戦う姿は、爽快でさえある。こういう現代的な価値観もやはり斬新なのである。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 『源氏物語』の主人公・光源氏といえば、日本文学史上に燦然と輝くイケメンのプレイボーイである。何しろこの男、若い頃に義母と関係を結んで妊娠させ、それでも懲りずに多くの女性と浮名を流し、その中には年端もいかない少女までいる。熟女からロリコンまで、じつにオールマイティーな乱れっぷりだ。
 また、『万葉集』をはじめとした和歌の世界に目を向けると、人妻の不倫の恋が盛りだくさん。平安時代から、日本では“不倫は文化”だったのである。
 そもそも『古事記』の冒頭でさえ、兄・イザナミノミコトと妹・イザナミノミコトの近親相姦によって、日本という国土が生まれたというトンデモ話。つまり古典には、これでもかというほど、セックスとエロが満載ということなのだ。
 一見お堅く見える古典が、そんな淫らな世界観に満ちていると、分かりやすく解説しているのが『本当はエロかった昔の日本』(新潮社刊/定価1400円+税)。難解で親近感も湧かなかった文学が、下ネタ丸出しの性愛ワールドだったことを、面白く読み解いてくれる。
 著者は“古典エッセイスト”の大塚ひかりさん。『源氏の男はみんなサイテー』(マガジンハウス)、『愛とまぐはいの古事記』(KKベストセラーズ)など、古典に眠る下ネタに光を当てた話題作を、数多く執筆している。日本人は世界でも有数のスケベな国民といわれるらしいが、その説を実感し、刺激的な愛欲劇に触れることができるだろう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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