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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 見事な采配で憲法改正への道

掲載日時 2015年12月30日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年1月7・14日合併号

 ついに軽減税率の大枠が決定した。'17年4月から消費税率を10%に引き上げる際に、生活必需品の税率を据え置く軽減税率の対象品目を生鮮品と加工食品とし、酒類や外食は対象外とすることが決まったのだ。

 当初、財務省は生鮮品だけを対象とすることを主張した。それならば財源は4000億円で、財源も手当てできるとした。しかし、公明党は、食料品全般への適用を譲らなかった。
 この主張は、経済的にみると正しい。なぜなら、お金持ちは生鮮食品を買ってきて家で調理するが、時間に余裕のない中堅層はコンビニの弁当、そして更に時間もお金もない庶民は、牛丼を数分で平らげる生活だ。だから、生鮮品だけを対象とすると、金持ち優遇になってしまうからだ。
 安倍総理は、公明党の提案を採用した。軽減税率の対象かどうかの線引きがしやすいという理由もあるが、最大の理由は、公明党に借りがあったからだ。安全保障関連法案に与党として賛成したことで、平和主義を掲げる公明党は、支持者から激しい突き上げを受けていた。総理は、傷ついた公明党に恩返しをする必要があったのだ。

 軽減税率の対象を食料品全般に広げることは、安倍総理にもう一つのメリットをもたらした。国民に、総理が減税をしてくれたような錯覚を抱かせることができたことだ。今回の消費税率10%への引き上げは、5兆6000億円もの国民負担をもたらす大増税だった。軽減税率の財源は1兆円だから、結果的に4兆6000億円もの増税を課しながら、何か官邸が国民に優しいことをしたかのような印象を与えるのが軽減税率なのだ。
 一方、一時は外食も含めるとされた対象品目から、最後に外食が落ちた。これで財務省のメンツも立つことになった。さらには、新聞は対象とするが、雑誌は対象としない方向だ。御用メディアには軽減税率という“ご褒美”を与え、自分の悪口を書く週刊誌は増税の対象とすることにしたのだ。
 公明党、財務省、新聞の顔をすべて立て、国民にもいい顔をする。これが、今回の軽減税率で安倍総理がやったことだ。

 ただ、私は来年6月に安倍総理が消費税引き上げ延期を発表する可能性は十分あるとみている。日本の景気が後退過程に入っており、消費税を上げられる状況ではなくなるからだ。
 総理は、今後の内閣支持率を見ながら、来年7月の参議院選挙に勝てそうであれば、そのまま今の軽減税率案で行く。もし、雲行きがあやしいとみたら、緊急の記者会見を開いて、消費税引き上げの再延期を発表するのだ。来年7月の参院選は、衆参同日選挙になる可能性も高いと私は思っている。そこで圧勝した上で、憲法改正への道を開くためだ。
 軽減税率で、あれだけ財源の問題を議論したのに、政府は一転して、財源の問題を封印してしまった。その理由も、選挙までは、国民負担増に触れたくないからだ。

 この見事な戦略に国民はすっかりはまってしまった。来年の選挙で与党圧勝は揺るがないと思う。そして、それからの3年間、選挙を気にせず、じっくり腰を落ち着けて、憲法改正に向かうのだ。

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