葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(128)

掲載日時 2016年11月05日 14時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年11月10日号

◎快楽の1冊
『七四』 神家正成 宝島社 1680円(本体価格)

 政治に特に関わる仕事をしていない多くの国民にとって、自衛隊はどういう存在なのか。あって当然と思っている人、違憲の権力集団であると憤慨し続けている人、それぞれ100人いれば100の考え方があるだろう。自衛隊は戦後から現在まで、一貫して微妙なはっきりしない捉えられ方をされてきた存在なのだ。
 本書『七四』の主人公・甲斐和美は陸上自衛隊の三等陸尉だ。20代の女性である。市ヶ谷駐屯地の中央警務隊に所属している。自衛隊内の犯罪捜査等が主な仕事だ。静岡県の富士駐屯地で自衛官・赤川巧の死体が見つかった。場所は1974年に生まれた戦車、七四式戦車の中だ。最初は自殺だと判断されていた。しかし、実は自殺ではなく他殺である、という匿名の告発電話が中央警務隊に来たのだった。自殺か他殺かをはっきりさせるため甲斐は富士駐屯地へ向かう。
 死体が見つかったとき、戦車は施錠されており、誰かが赤川を殺してから外に出ることはできないはずだ。しかし、甲斐は戦車を詳細に調べ、脱出できる可能性を見つけ出す。そうとなれば他殺の線も考えなければ。容疑者を絞り込むことを念頭に彼女は駐屯地内で聞き込みを始める。
 傑作、と言っていいだろう。作者は自衛隊勤務をしていた経験がある。だからだろうか、隊の歴史、そして現状を詳細に書いていくのである。であって、堅苦しくない。つまり舞台を完全に構築した上で、エンターテインメイントを存分に繰り広げている。
 先述した自衛隊の存在意義を問いつつ、ヒロインを主役にしたミステリー、さらには躍動感あふれるアクション・シーンと、その展開は飛躍的だ。別の男性主人公も登場し、彼が過去を振り返るシーンは青春小説である。政治に関わる大きな問題を軽視せず、見事な娯楽小説を仕上げた作者の手腕はかなりのものだ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 男性向け恋愛マニュアルは、オヤジ世代が若かった頃から折に触れて刊行されていた。モテたい男にとっては何とも重宝できる書籍だったが、ついに「ここまで来たか」と思わず膝を打ったのが、『いかにして私は12歳年下の女性の心を盗んだのか』(三五館/1300円+税)である。
 タイトルから分かる通り、年の差恋愛の成功の秘訣をまとめた1冊。しかも、読者対象を40代以上の中年男性に絞っている。
 つまり、これまで結婚しなかった(できなかった?)中年男に、年齢の離れた若い女をGETしようと勧めているのである。
 仮に現在40歳なら、38歳より28歳のほうが落としやすい…本書はそう説く。確かに若造にはない、余裕ある態度で接することができるのがオトナの魅力ではある。具体的な方法として、「メールの返信がなかった理由を尋ねるメールを送ってはいけない」「年下女性を子ども扱いしない(自分と対等に扱う)」などが記されている。
 また、「ことさら誠実さをアピールしてはいけない」とも。40歳も過ぎれば、過去、仕事や恋愛で修羅場を乗り越えてきたはず。純粋さなんてのはとっくに捨て去り、悪知恵もずる賢さも備えていて当たり前なのだから、誠実一辺倒の男はかえって物足りない印象を与えかねないというわけだ。
 だが、それにしても、四十路を超えてまで女の落とし方を本から学ぶというのも、何だか情けない。それだけ男が頼りない時代になったということか…。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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