林ゆめ 2018年12月6日号

健康長寿は毎日の観察から 腎臓を守る“尿チェック”

掲載日時 2018年07月14日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年7月19日号

 腎臓病の罹患者は今や1600万人とされ、高血圧、糖尿病の人の5人に2人は患っていると言われる。そもそも腎臓病は、病気になっても自覚症状がないため、つい油断しがちだ。
 「腎臓は“無言の臓器”と呼ばれ、腎臓病を未然に防ぐには本人の努力が必要。特に尿のチェックは重要で、具体的には泡立ちの度合いを見ることです」(専門医)
 朝起きてトイレで用を足すと、いつもと違う色をしていたり、泡立ちの量の違いに気付くことがある。「ひょっとして悪い病気なのかも…」と、不安に駆られた経験を持つ中高年者も多いだろう。

 腰の背中側に2つある腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物を取り除き、余分な水分とともに体外に排出する“尿製造機”のイメージが強い。しかし最近では、多くの臓器と情報を交わし、臓器を制御することで生命維持に貢献していることも分かっている。
 「心臓が送り出す血液の4分の1が集中する腎臓は、血液管理の司令塔でもあるのです。24時間働き続け、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、水分やミネラルの量調整をし、きれいな血液を全身に供給するほか、エリスロポエチン(EPO)やレニンと呼ばれるメッセージ物質を放つことで“酸素の運び屋”である赤血球の量や血圧も調節します。さらに骨づくりに必要なビタミンDを活性化させ、ホルモンを産出する役割もある、非常に重要な臓器といえます」(健康ライター)

 都内で総合医療クリニックを営む医学博士・遠藤茂樹院長は、さらにこう説明する。
 「腎臓は寿命や老化にも大きく関係します。血液中のリンの濃度が少ない動物ほど寿命が長いことが、最近の調査で分かってきました。主成分がリン酸カルシウムである骨は、腎臓と絶えず会話を交わし、血液中のリン濃度が高くなると“リンが十分に足りている”というメッセージを出します。腎臓にはその受容体があり、この情報を受けて血液中のリン濃度を調整しているのです。腎臓の機能が失われると、血液中のリンの濃度が過剰になり、血管内皮にリン酸カルシウムが沈着して血管が石灰化する。血管が狭窄したり、血栓ができたりして、脳梗塞や心筋梗塞を起こすのです」

 ちなみに、腎機能が低下してリンが体内から排泄できない場合は骨がもろくなり、簡単に骨折してしまうなどの症状が出る。
 また、逆に言えば、腎臓は心臓、肝臓、肺、脳、腸、骨などあらゆる臓器と深く関わっているため、どこかが悪ければ腎臓に悪影響が出る。
 例えば、心臓のポンプ機能が衰えれば血流が減り、常に大量の血液が必要とする腎臓はダメージを受けてしまう。また、何かしらの薬を飲んでいる場合、それを代謝する腎臓は大きな負担がかかり、それが他の臓器に影響を与える可能性もある。つまり腎臓を守るには、不必要な薬やサプリメントは飲まない、医師が処方した薬は用法・用量を守る、汗をかく夏場は医師との相談のもとで高血圧の薬を減らすなど、薬との付き合い方を変える必要もあるということだ。

 ところが、前述のように“沈黙の臓器”と呼ばれる腎臓は、その機能が破綻する寸前まで自覚症状が表れにくい。
 「腎臓の機能を調べる血中クレアチニン値は、男性が0.65〜1.09mg/dl、女性は0.46〜0.82mg/dlが基準です。そこから外れた数値だと、疲れ、だるさ、むくみなど腎臓特有の複数の症状があり、尿にも変化が表れれば、腎臓の機能低下を疑うべきでしょう。例えば、尿量が減るか、出なくなった場合。尿を作る腎臓の能力が極端に低下しており、急性腎臓障害を起こしている可能性があるため、すぐに病院に行くべきです」(同)

 また逆に、尿量が多い時は、単なる水分の摂りすぎや糖尿病以外に、慢性腎不全の初期症状の疑いがある。
 体内の保水機能が低下して多尿になる“尿崩症”の中には、尿濃縮を指示するホルモンが出ていても、その作用部位である尿細管に異常が起きている腎性尿崩症の場合もあるのだ。

 加えて、尿の“泡立ち”にも注意が必要だ。
 泌尿器専門医はこう言う。
 「尿が泡立ってなかなか消えないと訴えて検査に来られる方がいます。大半は落下によってできる細かい泡がドーム状になった状態を気にされていて、この泡の場合は心配いりません。しかし、蜂の巣のように大きめで洗剤のシャボン球のようにふんわりした感じの泡である場合は、蛋白が混ざっているため医師の診断が必要となります」

 最近の尿検査で重視されているのは、腎臓の働きの指標となるクレアチニン値とeGFR(推定系球体ろ過量)なのだが、専門医はこう続ける。
 「eGFRもいいのですが、もっと尿蛋白を重視すべきとの見方もある。尿に蛋白が漏れ始めているということは、腎臓に何らかの異変が起きている可能性がある証拠だからです。健康診断などで、蛋白が出ていると言われても、そのまま放置する人が多い。痛くもかゆくもないし、見た目も大きな異変がないため、この程度なら平気だろうと甘く考えてしまいがちです。そのままにしておくと、腎臓機能がどんどん悪化する可能性があるので、注意すべきです。泡のチェックは、その意味でも重要なのです」

 さらに注意が必要なのは、尿の色だという。真っ赤な尿はもちろん、コーラのような褐色の尿が出る場合も、専門医の診察が必要になる。
 「尿は体液を調整する役割もあるため、水分が足りていなければ濃い色になりますし、十分に満たされていれば透明に近い色になります。また、激しい運動をした後などに血中から筋肉の成分が混ざり込み、こちらも濃い尿が出るケースもある。などなど、体内の状況が敏感に表れるため、普段から尿の色をチェックして、安静にしている状態でいつもとは違う赤色や褐色の尿が出たら注意すること。腎臓に炎症があるケースだけでなく、膀胱がん、膀胱炎、尿路結石といった尿の経路に問題があることも多いのです」(内科医)

 各臓器を支える要となっている腎臓をいたわるためにも、サインとなる尿の状態を観察する癖をつけよう。


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