葉加瀬マイ 2018年11月29日号

話題の1冊 著者インタビュー 加藤一二三 『求道心』 SB新書 800円(本体価格)

掲載日時 2016年04月09日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年4月14日号

 −−“神武以来の天才”と呼ばれた加藤さんですが、近年の若手棋士たちの実力をどう見ていますか?

 加藤 60年を超える現役生活において、若手棋士との対戦は常に経験していますが、昔との相違点は若手棋士による研究会がより盛んなこと、それに伴い序盤研究が進化し、戦型が多様化したことの2点と考えます。かつて大山康晴十五世名人と並んでアマチュアの方へ指導対局を行ったときのこと、真摯に向き合う大山名人の姿勢に感銘を覚えた経験があります。今の若手棋士もまた普及活動に熱心で、アマチュアに丁寧に指導していますね。

 −−相手側から盤面を見る『ひふみんアイ』はネットでも評判です。やはり見えるものが違うのですか?

 加藤 ひふみんアイ誕生は、昭和54年2月7日、埼玉県秩父市で開催の第28期王将戦第5局にさかのぼります。対戦相手の中原誠十六世名人の序盤における巧みな指し回しを受け、攻め方に悩んだ私は、名人の中座時にふと思い立ち、相手側に回り込んで盤面を眺めてみました。すると、天来の妙手といえる?5五歩の一手がひらめいたんです。脳内で読むだけでは見えなかった読み筋が、盤面を反転させることで新鮮な景色として映り見えてくる瞬間が確実にあります。どのような局面でも決して諦めず、手を尽くす姿勢が、努力だけでは及ばない幸運やツキを呼び込むと信じています。また、ひふみんアイの精神に通じると思っています。

 −−昨年の『将棋電王戦ファイナル』をもってコンピューターとプロ棋士の対決は決着を見ましたが、両者の対決をどう考えますか?

 加藤 コンピューターとの対戦は未経験ですが、対戦した若手棋士によれば、私の得意とする対振り飛車棒銀戦法も最新型までソフトは把握しているといいます。ただ、この先どれだけソフトが進化したとしても、プロ棋士の存在理由を脅かすには足らないだろうと信じています。データではなく、無から有を生み出すひらめき力が備わっていることこそが、ソフトと人間の最大の相違点であり、人間側の強みじゃないでしょうか。また、ソフトに勝利する方法として、先攻逃げ切りの徹底が必要だと考えます。大山康晴名人や升田幸三名人と大舞台での対戦を繰り広げた20歳当時の経験から、将棋は序盤で相手をリードできれば、その後は最強の一手を指し続けることで完勝できることを悟りました。先攻逃げ切りは将棋の魅力の一つですが、対ソフトの局面でも、徹頭徹尾この作戦を貫くのが最善の策ではないかと考えています。
(聞き手/程原ケン)

加藤一二三(かとう ひふみ)
1940年1月1日福岡県嘉麻市生まれ。75歳の現役最年長プロ棋士。'54年、14歳で史上最年少のプロ棋士となる。『アウト×デラックス』などバラエティー番組にも出演し、「ひふみん」の愛称でお茶の間の人気者に。

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