対象はハローワークだけ ブラック企業の“離職率公表”の無意味

社会・2013/12/12 21:00 / 掲載号 2013年12月26日号

 厚生労働省が、大学、大学院生を採用する企業に対し、離職率の公表を求めていくという。若者に過酷な労働を強いる“ブラック企業”対策で、求人票に過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄を設ける。記入は強制ではないが、空欄は「公表できないほど離職者が多い」と白状したことになり、担当者は抑止効果に期待する。
 しかし、これはハローワークを通じて募集するケースに限定されるのがミソ。大学の就職課を通じての募集であれば、ハナから対象外だ。連日に及ぶ深夜残業で散々こき使い、若者を単なる消耗品としか見ていないブラック企業には、見事な“抜け穴”と映るだろう。

 第一、新卒者を採用する場合は大学に求人票を送るか、人事担当者が直接訪問して「ぜひ、優秀な学生を」と頼み込むのが当たり前。そんな手続きを一切省略し、厚労省所管のハローワークに求人票を送って新卒者を採用する会社など極めて少数派だ。求人情報誌の編集者が苦笑する。
 「厚労省は『ブラック企業対策に積極的に取り込んでいる』とアピールしたいのでしょうが、何の意味もありません。“本物”であれば、大学の就職課に出向けばいいだけの話です」

 ハローワークを訪れるのは中高年をはじめ既卒者が圧倒的に多いが、離職率公表は新卒募集に限られるため、この場合も対象外だ。ならば20〜30代の既卒者を大量に採用し、過酷な労働を強いてもデータの公表は封じ込める。まさに筋金入りのブラック企業にとっては厚労省サマサマの“忍法”でしかない。
 「大学は文部科学省の所管だから厚労省は介入したくない。そんな役所の縄張り意識が背景にあるのでしょう」(派遣会社関係者)

 ユニクロ、ワタミなど世間から“ブラック”の烙印を押された“一流企業”が、どこまで誠実に離職率を公表するか。それこそ、就活する大学生にとっての大きな関心事だ。

関連記事
関連タグ
社会新着記事