中川祐子 2019年1月31日号

本好きリビドー(38)

掲載日時 2015年01月16日 17時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年1月22日号

◎快楽の1冊
『月光のスティグマ』 中山七里 新潮社 1600円(本体価格)

 中山七里は今、多くの愛読者がいる人気作家の一人と言っていいだろう。『さよならドビュッシー』など音楽を題材にしたミステリーの書き手としてつとに有名だが、その中にもサイコ・サスペンスや警察小説の要素も盛り込む幅広さを持っている。多彩な作家である。
 本書『月光のスティグマ』は恋愛ミステリーである。しかも過去に日本全体に影響を与えた阪神淡路大震災と東日本大震災を作中に盛り込む社会性も持っている。ちょっと盛り込み過ぎの感もあるけれど、これが中山七里の作風なのだ。
 物語の最初は主人公・神川淳平の少年時代を描いている。隣に住む八重樫家の姉妹、麻衣と優衣は幼なじみだが、一卵性双生児で傍目からはどちらがどちらかわからない。淳平は話し方などから性格を測り、区別をつけることにしている。しかし、ある日、麻衣が自分の兄を刃物で殺害する様を目撃する。いったいどういうことなのか。真剣に考える時間はなかった。阪神淡路大震災が起きたのである。麻衣はその被害で死に、生き残った優衣はなぜか行方知らずになった。
 それから歳月を経て、淳平は特捜部検事になっていた。NPO法人を使って不正の献金を得ていると思われる政治家を追及するため、彼はその法人に入り込み、潜入捜査を始める。ところがその政治家の私設秘書を務めているのが優衣であった。思わぬ再会。彼は兄を殺したのが麻衣か優衣なのか、どちらかとはいえないとずっと思って生きてきた。そして今、潜入捜査が故、身分を隠しながら優衣と会っていなければいけない。苦しみの中、しかし彼は優衣とベッドを共にする。そして東日本大震災が…。
 ミステリーに出てくる探偵役が事件を傍観する立場にあるのか当事者なのか、作品ごとに違うが本作は明らかに後者だ。怒涛の道を歩んできた検事の姿がある。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 全国の公立学校の教師が懲戒免職される際、一番多い理由は何か? 実は“わいせつ行為”である。2012年には、過去最高119人の教師が生徒に対するわいせつ行為でクビになるという、不名誉な数字を記録したそうだ。
 共同通信社の記者・池谷孝司氏の著書『スクールセクハラ〜なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』(幻冬舎/1400円+税)は、学校が舞台となったそのような性犯罪をルポした渾身のドキュメントだ。
「生徒をカラオケに行こうと誘い、向かった先はホテル」「試験問題を指導すると言って放課後に引き留める」「担任からのしつこいメール攻勢」−−。さらに「隙があったのでは」と被害者を責める二次被害。そして不祥事を隠蔽しようとする学校と教育委員会の事なかれ主義という、あきれた行状の数々。その実態が、心に傷を負った被害生徒たちの声なき声と共につづられ、一気に読破できるだろう。
 特に注目すべきは、スクールセクハラとは他の性犯罪とは違う、学校だからこそ起こり得る特殊な要因をはらんでいるという点だ。つまり、生徒にとって教師は絶対的な存在ということ。相手が先生だから抵抗できないという心理に付け込む卑劣な教師たち…。
 筆者が懇意にしてもらっている著名なAV監督から、「少女を性愛の対象と見る男は、必ず子どもの近くにいる」という話を聞いた。偏愛性向の男たちが聖職者として教壇に立っている姿は、身の毛がよだつほど恐ろしく、おぞましい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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